焼き肉、わけても臓物系の食肉が大好きな私は、これまで銀皿の脇に「申し訳」程度に置かれているネギやカボチャなどには見向きもしなかった。が、この書を読んで定番の注文の中に「野菜焼き」が加わった。 日頃、私たちが口にする野菜は、もともとは「野生」のものである。野草として原生していた野菜たちは、食用により適するよう、また収穫がより容易になるよう、先人たちの知恵によって改良されてきた。そして今、食卓で目の前に現れる野菜たちは、「植物」ではなく「食材」として供されている。 この書は「野菜だって生きている」をテーマに、43種の野菜を取り上げ、その「植物」としての素顔を紹介している。ただし、植物としての野菜の物語を、とうとうと書きつづったものではない。それでは、小学校の理科の教科書とかわらない味気のないお話である。 本書は、ヒトの手で改良を重ねられることで、食用の野菜が、野山に生息するほかの植物と比