「めし代のない人、お腹(なか)いっぱいただで食べさせてあげます」。店頭にそんな張り紙をして27年たつ。昼と夜の書き入れ時、食後30分の皿洗いを約束した学生に、ご飯をてんこ盛りにした定食を振る舞う。京都大や同志社大に近い出町(でまち)店(京都市上京区)に来て約10年。すっかり学生街の名物になった。 20歳で駆け落ちし大阪へ。夫婦で食べていくことに苦労した時、年配の知り合いが鍋料理の食卓に誘ってくれた。ありがたさが身に染みた。腹をすかせた学生たちが、若いころの自分と重なって見える。張り紙には「苦労してる若い人の助けになれば」との親心がこもっている。 資格試験の勉強などでアルバイトができず、流し台の前に立つ若者は1日に5人を超えることも。皿洗いを何回も経験し「おっちゃんのおかげで受かったで」と報告に来てくれるのがうれしい。弁護士になった人も3人。「将来、皿洗いをしてご飯を食べたことを思い出したら