山折哲雄 編 2023年は、弘法大師空海の御生誕1250年、真言宗開宗1200年の節目の年にあたります。四国の豪族の家に生まれ、遣唐使の一員として唐で学んだ空海。当初はまだ無名の一僧侶でしかありませんでしたが、2年ほどの歳月を使い唐で密教を集中して学び、それを日本へ持ち帰り、発展させ、真言密教を完成させたことで知られています。 ここでは『空海に秘められた古寺の謎』(宗教学者・山折哲雄編、ウェッジ刊)より、なぜ空海が高野山の地を密教の根本道場として選び、開創したのかを、本書のなかから見ていきます。 山上が小盆地になっている高野山高こう野や山さんは和歌山県伊い都と郡高こう野や町にありますが、「高野山」という名称の山岳があるわけではありません。高野山とは、和歌山県北部を東から西に流れる、紀きノ川の南側に広がる山地に対する呼称です。 高野山の最大の地形的特徴は、山上が小盆地になっていることで、そも