軟らかい倉物ばかりがもてはやされる昨今、人々は噛むことを忘れてしまっているようです。 弥生時代では4,000回、戦前でも1,400回であった1回の食事で噛む回数が、今ではなんと600回です。この噛まない生活が全身の健康にとって、どのような影響を与えているのでしょうか。高齢化時代を迎えて健やかに老いるために、今回は噛むことの効用について改めて考えてみることにしました。 歯は歯根膜と呼ばれる無数のたんぱく質せんいによって、あごの骨に結びつけられています。噛むという機械的刺激は、この繊維を通してあご全体に分散されて組織をつくっている細胞に力を与えます。 あごの骨は小学校入学のころから急速に成長するが、最近はハンバーグやスパゲティなど軟食化が進み、あごがあまり使われず充分に発育しません。しかし歯の本数と大きさは変わらないので、小さなあごに並びきれずに歯列不正となります。 食物がはさまってむし歯にも