ロシアが侵略を続けるウクライナでこの夏、キリスト教を巡る2つの大きな出来事があった。一見何の関係もないが、実はいずれもロシア正教会の原理主義と深いかかわりがある。プーチン政権の野望を支えるのも、正教の再興を目指す原理主義だ。古代ビザンチン風の複合施設がオープンロシアが2014年から占領するウクライナ南部クリミア半島に今年7月、「新ヘルソネス」と名付けた巨大な複合施設がオープンした。軍港セバス
来る1月21日、レーニンの没後94年を迎える。遺体は死後すぐに防腐処理を施され、いまに至るまで一般公開されている。モスクワの赤の広場にある霊廟は、見学客の長い行列ができる人気スポットとなっているが、この観光名所を撤去しようという声がロシア国内で高まっている。そうなれば、革命家のつややかな亡骸は、もう二度と拝めなくなる。
(CNN) ロシアの若者に向けたローマ教皇フランシスコの演説に対し、ウクライナの当局者から「帝国主義的プロパガンダ」との批判が出ている。 教皇は25日、サンクトペテルブルクに集まったロシアの青年カトリック教徒へのビデオ演説で、自分たちをロシア帝国の子孫とみなすよう呼び掛けた。 教皇はこの中で、「自分たちが受け継いだものを忘れてはならない。あなた方は偉大なロシアの子孫だ。聖人や統治者、ピョートル大帝やエカテリーナ2世の偉大なロシア、教養と偉大な文化、偉大な人間性に恵まれた帝国の子孫だ。この遺産を決して手放してはならない」と語った。 さらに「あなた方は偉大な母なるロシアの子孫であり、それを踏まえて前に歩んでほしい。自分たちのあり方に感謝し、ロシア人であることに感謝してほしい」とも述べた。 これに対し、ウクライナ外務省のニコレンコ報道官は28日、教皇の演説を「帝国主義的プロパガンダ」と呼んで反発
祖国に勝利をもたらすために──ウクライナとの戦争に参加するロシアの兵士たちは、必ずしも全員がそんな志を持っているわけではない。ロシアではいま、生きて働くよりも「戦場で死ぬ」ほうが遥かにカネになるからだ。自分の命と引き換えに家族の生活を守ることが「合理的な選択」のひとつになっている現状について、ロシアの独立系メディア「リドル」が報じた。 死とカネを崇拝する国家 プーチン政権は「死」というテーマを、なにやら崇高なものとして積極的に利用しはじめた──ウクライナとの本格的な戦争が始まった2022年が終わる頃、ロシア国内の知識人たちはそう気づいていた。 「戦場で死を遂げることで人生は価値あるものになる」という言説が広まり、世俗でも宗教の世界でも、多くの指導者が死を「偉業」と語っている。プーチンのロシアでは、死に対する独特な崇拝が広まっているのだ。 この実態をよく見てみれば、現在ファシズム化しつつある
ロシアのプーチン大統領は25日、ロシアで母の日にあたる27日を前に、ウクライナ侵攻に派兵された兵士の母たちとの会合に参加した。動員をめぐる不手際への批判が強まるなか、政府の改善策をアピールする必要に迫られた格好だ。プーチン氏は一方で「交通事故で毎年3万人が死亡する」「人はいつかは死ぬ」などと述べて戦死を美化。戦争協力を促した。 ロシアでは毎年、11月最後の日曜日が母の日となる。プーチン氏と17人の兵士の母たちとの懇談の模様は、テレビでも放映された。 プーチン氏は懇談の冒頭、侵攻による戦死者について、「私個人と国のすべての指導層が痛みを分かち合っていると知ってほしい」と語りかけ、テレビやインターネットには偽情報が多いとして、「信じてはならない」と訴えた。 SNSで動員兵の悲惨な実態の告発や、軍への不満が投稿されていることが念頭にあるとみられる。 「人はいつか死ぬ」という発言が出たのは、ウクラ
グリゴリー・ポチョムキンの肖像画。1790年の作品/Universal History Archive//Getty Images (CNN) ウクライナ南部ヘルソン市の親ロシア派当局は29日までに、18世紀のロシアの著名な司令官、グリゴリー・ポチョムキンの遺骨を市外に運び出したことを明らかにした。 ロシアが任命したヘルソン州のサルド知事がクリミア半島のテレビに語ったところによると、ポチョムキンの遺骨と彫像は聖カタリナ大聖堂から運び出され、ドニプロ川を越えてロシア支配地の奥深くに移された。 サルド氏はロシア国営RIAノーボスチ通信に対しても、ポチョムキンの遺骨を聖カタリナ教会から運び出し、ドニプロ川東岸に移したと明らかにした。 ポチョムキンは1783年、トルコからのクリミア併合で重要な役割を果たした。帝国時代の版図の回復を目指すロシア人にとって、ポチョムキンの記憶は今なお中心的な位置を占め
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イングランドにおけるゲオルギオスの日(セント・ジョージの日)の一光景。白地に赤い十字(セント・ジョージ・クロス=イングランド国旗)や赤いバラは、聖ゲオルギオスの象徴である。 ゲオルギオスの日(ゲオルギオスのひ)は、聖ゲオルギオスを記憶するキリスト教の聖名祝日。イギリスやスペインなどではゲオルギオスが殉教した命日とされる4月23日に祝われる。正教圏では5月6日(ユリウス暦4月23日)[注釈 1]に加えて秋にも祝日がある地域もあり、グルジアでは11月23日、ロシアでは12月9日に、より大きく祝われる。このほか地域によって、また復活祭との関係によって、これ以外の日が祝日とされることもある。ブルガリア(5月6日)およびグルジア(11月23日)では、ゲオルギオスの日が公休日である。 「ゲオルギオス」に対する各言語の表記の違いにより、「聖ジョージの日」(英語)、「聖ゲオルギイの日」(教会スラブ語)、「
「全世界の安和と、神の聖なる諸教会の堅立、および衆人の合一の為に主に祈らん」 (聖体礼儀の典礼文より 日本ハリストス正教会訳) 2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻は、正教の伝統に生きる人々にとって歴史的な脅威です。正教の信者にとってさらに厄介なことに、ロシア正教会の高位聖職者層が、この侵略を認めることを拒否し、代わりに、ウクライナの『出来事』と『敵意』に照らした平和の必要性について漠然とした声明を発表し、『聖なるルーシ』の一部としてウクライナとロシアの人々の兄弟的な性質を強調し、『邪悪な「西」』の敵意を非難し、さらには『邪悪な「西」』への敵意を積極的に奨励する方法で祈るようにコミュニティに指示することさえしていることです。 モスクワ総主教庁の多くの高位聖職者層のウラジーミル・プーチン大統領のウクライナとの戦争に対する支持は、正教的フィレティズム[自民族偏愛主義]的な宗教的原理主義
ベラルーシ情勢は相変わらず膠着状態 当連載では、しばらくベラルーシの話題から離れていましたが、今回は約1ヵ月振りにベラルーシを取り上げてみたいと思います。 結論から言えば、その後もベラルーシ情勢は膠着したままです。野党統一候補だったチハノフスカヤは10月13日、ルカシェンコに10月25日までに退陣するように求め、それに応じなければ国民がゼネストに突入するという「最後通牒」を付き付けました。もちろん、名うての独裁者がそんな要求に応じるはずもなく、最後通牒の期限が過ぎても何食わぬ顔で国民の指導者を演じ続けています。反ルカシェンコ派の市民は、チハノフスカヤの呼びかけに応じ、可能な範囲でデモやストを敢行していますが、平和的な抗議行動で体制が揺らぐ気配は、今のところ見て取れません。 ですので、今回も、漠然と情勢を論じるというよりも、テーマを設定してベラルーシを掘り下げてみたいと思います。この連載では
トップ海外キリル総主教、WCCの書簡に返答 「露骨なロシア嫌悪」「政治的偏見や一方的な見方」と反論 2022年3月14日 世界教会協議会(WCC)総幹事代行のイオアン・サウカ氏=写真=は3月2日、モスクワ及び全ロシア正教会の指導者キリル総主教宛てに書簡を送付し、ウクライナへの攻撃を止めるために「為政者たちへの介入と調停」「対話と交渉を通じて平和をもたらす努力」を求めた。書簡は、WCC加盟教会の指導者や信徒から日々、戦争を終わらせるよう、キリル総主教に仲介を求める手紙を受け取っていることを明かし、「この絶望的な時に、多くの人が平和的解決のための希望の兆しをもたらすことができる存在」として注目するキリル総主教に対し、「正教会の信仰深い信徒たちでもある、苦しんでいる兄弟姉妹たちのために、あなたの声を上げてください」と懇願した。 WCC中央委員の西原廉太氏(立教大学総長)によるFacebookの投
「レーニン像1体にたどり着くのに、平均して1週間かかるという感じです」。写真家のニルス・アッカーマン氏は、自身のプロジェクト『レーニンを探して(Looking for Lenin)』についてこう語った。 フランス人ジャーナリストのセバスチャン・ゴベール氏と一緒に進めるこのプロジェクトでは、ソビエト連邦の建設を率いたウラジーミル・レーニンの像を、これまでに70体撮影している。いずれもウクライナ国内にあるが、すべて壊されている。ソビエトの象徴を街からなくすという国の方針のためだ。 チェルノブイリ原発の倉庫に放置された高さ1.8メートルのレーニンの胸像。この発電所は当初、V・I・レーニン記念チェルノブイリ原子力発電所と呼ばれていた。(PHOTOGRAPH BY NIELS ACKERMANN, LUNDI13)
新型コロナに感染したフィラレート総主教=ウクライナのキエフ、2018年10月/Maxym Marusenko/NurPhoto/Getty Images (CNN) 新型コロナウイルスは同性婚に対する「神の罰」と形容していたウクライナ正教会の指導者が、新型コロナウイルス検査で陽性と判定された。 陽性反応が出たのはウクライナ正教会キエフ聖庁のフィラレート総主教(91)。容体は安定しており、治療が続けられているという。 陽性反応については、同教会が4日にフェイスブックの投稿で発表していた。8日の投稿では、「フィラレート総主教の健康状態は安定しており、治療が続いている」と伝えた。 フィラレート総主教は今年3月、ウクライナのテレビ局の取材に対し、新型コロナウイルス禍について「人の罪、人類の罪深さに対する神の罰」と形容し、「まず何よりも、同性婚という意味だ」と言い添えた。 これに対してウクライナのL
モスクワもいよいよ、街中がツリーだらけである。 ロシアではクリスマス、正月、ツリーの関係は少々ややこしい。かつてはヨーロッパと同様にクリスマスを祝い、帝政末期にはクリスマスツリーも浸透しつつあった。1917年の革命後は次第にクリスマスを祝うのは憚れるようになり、やがてツリーも負の遺産とされて一旦は姿を消す。しかし1935年の末に急遽、新年を祝う飾りとしてツリーを復活させる事が決定。36年の新年から、役割を新たにして再登場となった。 以後、「新年ツリー」(Новогодняя ёлка)として完全に定着して、現在に至る。 話は少々逸れるが、クレムリンの象徴の1つは、尖塔の頂点を飾る赤い星であろう。もともと、帝政時代のクレムリンの尖塔の頂を飾っていたのは、ロシア帝国の国章である「双頭の鷲」だった。これらクレムリンの「双頭の鷲」が撤去されたのは意外と遅く、1935年の10月である。代わりに4つの
カフカース山脈に位置する小国グルジアが自国呼称の変更を日本に対して求めていることは以前より知られていたが,どうやら政府は本格的に名称変更に乗り出すらしい。 (……)外務省も呼称を変えるべく次期国会に法案を準備している。同国から「グルジアはロシア語で、ジョージアと呼んでほしい」と求められているからだ。(……) 同国は6月末、ウクライナ、モルドバと共に欧州連合(EU)との連合協定に署名した。かつてソ連の一部だった同国は、これによって欧米との絆を確固としたものにした。呼称変更を日本政府に求めるのも、ソ連離れとも関係しているのだろう。 外務省が国の呼称を変えた例はベトナム(以前はヴィエトナム)とコートジボワール(以前は象牙海岸)がある。「先方の要望もあり国会は通るでしょう」と外務省。そうなるとマスコミも「ジョージア」と呼び、表記することになる。(客員編集委員)金言:「ジョージア」に変わる?=西川恵
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