ちょうど1年前の今頃、三鷹市芸術文化センター星のホールと小豆島高校体育館特設ステージを約1カ月にわたり満員にし、約9000人を動員した劇団ままごとの『わが星』(作・演出:柴幸男)。2009年の初演時から評判を呼んだ本作品だが、再演のたびに観客を増やしている。全編ラップミュージックに彩られた『わが星』は、いわゆる愁嘆場などないのだが、すすり泣きどころか号泣する観客が続出。「芝居じゃ泣かない」というちょっとひねた人でもハートがきゅっとする感覚に襲われたはずだ。「いやあよかった、いい体験した」で十分ではあるのだが、もうちょっと踏み込んでみると、演劇のまた別の面白さが見えてくる。ソーントン・ワイルダーの戯曲『わが町』(『わが星』の下敷きになった)の翻訳・上演台本を手がけた水谷八也氏が、両者を比較しながら、「演劇にしかできないこと」を考察する。 第54回岸田戯曲賞を受賞した柴幸男の『わが星』の初演は