(左右社・2970円) 常に動き、変化する言葉への考察 本書は、辞書作りの悪戦苦闘を開示してくれるエッセイで、著者はアメリカで最も歴史ある辞書出版社、メリアム・ウェブスターの社員編(へん)纂(さん)者である。この只者(ただもの)ではない辞書編纂者の、博識、自虐、ユーモア、言葉への深い愛と洞察に、笑わされ、泣かされ、はっとさせられて、巻擱(お)く能(あた)わず読み進んでしまう。 一つの言葉の語釈にたどり着くために、辞書編纂者はラテン語から古代英語から、はてはティーン向けベストセラー「トワイライト」シリーズまで隈(くま)なく目を走らせる。そして、ハリー・ポッターから生まれた新語「muggle<マグル>」が最高裁判決の反対意見陳述で使われていることや、ワルが使うイメージのある「ain′t」をジェイン・オースティンが使っている事実を探り当てたりする。若者言葉と思われがちな「頭…