本屋が好きだ。週に5日は本屋に行く。用事がなくても本屋に行く。疲れていても本屋に行く。むしろ疲れている時こそ本屋に行く。前回の来店時とほとんど品揃えの変わっていない棚をじーっと見つめ、昨日の私の琴線には触れなかったけれども今日の私の琴線には触れた本を取り出して、パラパラと中を覗く。新書特有の独特の匂いが紙の隙間からふわっと漂い、ページにびっしりと埋まっている、あるいは余白を演出している文字たちのダンスを堪能する。平仮名は淡く揺れ、漢字は力強く主張する。まだ見ぬこの世界に飛び込んでみたいと感じたら、それはもう恋だ。真っ直ぐレジに向かい、財布の中の硬貨と交換する。その他の未知の世界を棚に残したまま、私はこれから向き合うたったひとつの大切な世界を胸に抱えて本屋を出る。冒険の始まり。 東京の大学に通っていた4年間、私はずっと本屋でアルバイトをしていた。けして読書量が多い訳ではないが、本屋という空間