貧乏ゆすりやめてくれー こっちの机まで振動が来てるー 直接言っても治んないしどうしてくれようか… そんなに足動かしたいならランニングでもして来い!! 飯食うときに口空けて噛むなー くちゃくちゃ音してキモいんだよ!! そして迷い箸から寄せ箸に繋がるコンボきたー おうちでどんな躾されてきたんだよオイ!!
そういうこと言ったのに、ただ生きてたら「就職はまだなの?」とかの精神攻撃が始まる。生きてるだけで価値のある人間なんて本当はごく一部。
『婚約者を亡くしてしまった』 そう言うなり、妹は声を上げて泣き出した。 婚約相手は大手企業に勤める背の高い好青年で、オーディオにプログラミングと趣味も多彩だった。 幾度か顔を合わせた事もある。話し上手で細かな気配りの利く、感じの良い男だった。 彼が帰宅中に対向車をかわしきれず帰らぬ人となった、その夜から、妹は部屋へ閉じこもりきりになった。 扉の前に置かれた食事にもほとんど手をつけない。時折すすり泣く声が聞こえては、その度ガリガリと床を引っ掻いている。 心配に思って"ガリガリ"の最中に声をかけてみた。すると「違うの」と答えが返る。 「違うって、何がだい」 「音が……違うの」 「音?」 「彼のは、もっと優しかった」 「優しいって?」 「……」 僕はゆっくりと部屋の扉を開けた。――幸い、妹からの拒絶はなかった。 彼女は手にiRiverのデジタルプレイヤーを携え、イヤホンを挿して音楽を聴いている。
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