僕が『平成のヒット曲』という本を出したのは約2年前の2021年のこと。そこの後書きにはこう書いた。 改めて振り返った今、ひょっとしたら我々が過ごしてきたのは、ある種の「幸福な時代」だったのではないだろうかという思いがある。 もちろん、そう考えない人も多いだろう。バブル崩壊後の経済停滞は長く続いた。二度の震災もあった。本書の中でも「失われた」という言葉は頻出している。 それでも、ポピュラー音楽、大衆文化について考える時には、「平成」という言葉は、(たとえば「大正」と同じように)、ある種の豊かさのイメージと共に振り返られるようになっていくのではないかという予感がある。 その予感は、いい意味でも、悪い意味でも、当たったような気がしている。 悪い意味というのは、その「豊かさ」の感覚が、いよいよ失われつつある、ということ。日本という国が他の国と比べて相対的に貧しくなっているというのは、たとえば海外旅
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