北アルプスにある水力発電所を通る「黒部ルート」の観光をめぐり、関西電力と富山県がにらみ合っている。関電が「作業用の通路」として見学者を絞っているが、県は「もっと増やしてほしい」と訴えている。企業が持つ施設を観光に生かそうとする取り組みが広がるが、課題も浮かぶ。 高さ186メートルの黒部ダムから勢いよく放たれた水が虹をつくる。「黒部ルート」の入り口は、その脇にあるトンネルだ。観光客でにぎわう立山黒部アルペンルートと、紅葉が美しい黒部峡谷を結んでいる。 黒部ルートは、珍しい発電所の設備や歴史を体感できる。斜度34度の急なインクライン(ケーブルカー)に、NHK紅白歌合戦で中島みゆきが歌った黒部川第四発電所(黒四〈くろよん〉発電所)。谷間の温泉地の欅平(けやきだいら)へ向かう「上部専用鉄道」のトンネルの一部は「高熱隧道(ずいどう)」と呼ばれ、約80年前に人手で掘ったときは160度以上もあったと言わ