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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (116)

  • 『ウィトゲンシュタインの講義 数学の基礎篇』はスゴ本

    ウィトゲンシュタインののなかで、これが最も分かりやすい&面白い(当社比)。 数学という存在を、人の知性の産物である「発明」と捉える人がいる。いっぽうで、人が見出した世界の質である「発見」と見なす人がいる。この議論は、[『神は数学者か』はスゴ]にて語ったが、いずれの場合にせよ、数学の限界が(仮に)あるとしたならば、それは人の理性の限界であることは了解していただけるだろう。なぜなら、「発明」であれ「発見」であれ、主語が人である限り、その限界も人に属するからである。 ウィトゲンシュタインの講義は、数学の限界を見極める一方で、数学の底(もともとの了解事項)を明らかにしてくれる。 数学の底? そんなのユークリッド幾何学やヒルベルトの基礎付けを見るまでもなく、「定義」と「形式」でしょうに(あるいはそこから定義づけられる公理系といってもいい)。書を手にするまでは、そう考えていた。だが、「発明」で

    『ウィトゲンシュタインの講義 数学の基礎篇』はスゴ本
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    dododod 2018/02/18
  • 『ゲーデル、エッシャー、バッハの薄い本』が電子書籍で読めます

    知的冒険の書として『ゲーデル、エッシャー、バッハ』というがある。タイトルが長いので、頭文字をとってGEBとしよう。 GEBは、ダグラス・ホフスタッターという天才が、知を徹底的に遊んだスゴだ。不完全性定理のゲーデル、騙し絵のエッシャー、音楽の父バッハの世界を、「自己言及」のメタファーで縫い合わせ、数学、アート、音楽、禅、人工知能、認知科学、言語学、分子生物学を横断しつつ、科学と哲学と芸術のエンターテイメントに昇華させている。 知的興奮に満ち溢れた一冊であり、わたしも大いにお薦めしているのだが、一言で言うと、こいつは鈍器である。700頁を超える大著であり、だいたい1kgで、サイズ的には大きめのレンガといったところか。GEBで殴り続けると人は死ぬ。 この厚いGEBを緩く読もうという読書会があり(ゆるゆるゲーデル、エッシャー、バッハ、略してゆるげぶ)、ゆるーくやっている。ゆるーくやっている割に

    『ゲーデル、エッシャー、バッハの薄い本』が電子書籍で読めます
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    dododod 2017/11/20
  • この本がスゴい!2016

    人生は短く、積読山は高い。 せめては「死ぬまでに読みたいリスト」を消化しようとするのだが、無駄なあがき。割り込み割り込みで順番がおかしくなる。読了した一冊に引きずられ、リストは何度も書き直される。 重要なのは、「あとで読む」は読まないこと。「あとで読む」つもりでリツイート・ブックマークしても読まないように、あとで読もうと思って読んだ試しはない。だから、チャンスは読もうと思ったそのときしかない。実際に手にとって、一頁でも目次でもいいから喰らいつく。勢いに任せて読みきることもあれば、質量と体力により泣く泣く中断するもある。かくして積読山は標高を増す。 ここでは、2016年に読んだうち、「これは!」というものを選んだ。ネットを通じて知り合った読書仲間がお薦めするが多く、それに応じてわたしのアンテナが変化するのが楽しい。わたし一人では、数学経済学歴史学、進化医学や認知科学の良を探し出せな

    この本がスゴい!2016
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    dododod 2017/01/03
  • ファンタジーだった『聲の形』

    映画観てきた。これは素晴らしいファンタジーだ。 『聲の形』は、『シン・ゴジラ』『君の名は。』よりも、荒唐無稽だった。前者は「ゴジラ」、後者は「入れ替え」が虚構だが、『聲の形』の"ありえなさ"は、ほぼ全編にわたる。いじめの描写が辛すぎて、原作は1巻しか読んでいない。そのため、この感想は的外れかもしれない。だが、このモヤモヤを溜めると体に悪いので吐き出す。 『聲の形』は、聴覚障碍者の女の子と、彼女をいじめる主人公とのボーイ・ミーツ・ガールの話だ。彼はいじめたことを後悔し、暗転した人生を送るわけなのだが、数年の時を経て、再び彼女に会いに行く。彼の救われなさが、「×印を付けられた他者」や「水底からのような音声」に表象されており、要所で主観世界がドラスティックに変化するアニメ的な仕掛けは良くできている。特に、「その音を感じているのはどのキャラクターか」によって、わたしの「聴こえ」を使い分けているのが

    ファンタジーだった『聲の形』
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    dododod 2016/09/24
    "『聲の形』は、『シン・ゴジラ』『君の名は。』よりも、荒唐無稽だった"
  • 「君の名は。」の重要な疑問(ネタバレ)

    映画観てきた。すばらしくよかった。「男女が入れ替わる」古典的なネタから、よもやこんなにも美しい物語を見せてくれるとは。「シン・ゴジラ」が濃厚な庵野ワールドなら、「君の名は。」は適度な新海マイルドだな。いつもと違うと思ってたら、このつぶやきで納得。 シン・ゴジラ「制作委員会方式を排除して 監督の好き勝手にやらせて大正解」 君の名は。「制作委員会方式にして ともすれば暴走しがちな監督の趣味性をコントロールして大正解」 — 吉岡 平@日々是口実w (@torinakisa) 2016年9月4日 観た人のつぶやきを見ると、各々の興味が透けて面白い。「彗星の軌道がおかしい」「電車の音がおかしい」「その地形でヤマビコは出ない」「トイレはなぜ○○だけ?(ジェンダー的な問題)」「X68000」など、ツッコミどころが各人のリアリティラインになるのかも。実写よりも生々しく美しい映像を眺めていると辛口になるのは

    「君の名は。」の重要な疑問(ネタバレ)
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    dododod 2016/09/06
  • 「NEW GAME!」の涼風青葉は何を読んでいるのか?

    「NEW GAME!」いいよね。ゲーム会社で頑張る女の子を描いたコミック&アニメは、痛勤電車と朝残業で消耗したおっさんを癒してくれる。 主人公は涼風青葉18歳、上司も同僚もかわいい女の子で、画面から男臭を抹消しているサービス精神もいい。来は「おっさんが作っておっさんが消費する」のだから、男が出てこないファンタジーなのは合点承知だ。しかし、「激務すぎて疲労のあまり、おっさんが互いを美少女としてしか認識できなくなった」説を見かけてしまい、以後そのような目が混じるようになった自分が情けない。そして今回は、それを補強するような記事になってしまって申し訳ない。 なぜなら、これから彼女たちが何を読んでいるかを紹介するから。青葉の職場はブースによって仕切られており、各人の席には様々なやオブジェが並んでいる。そういう背景から彼女たちの趣味を想像するのは愉しい。特に好きなのは、仕事上の資料を除いた個人の

    「NEW GAME!」の涼風青葉は何を読んでいるのか?
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    dododod 2016/08/20
    まさかここでも”「激務すぎて疲労のあまり、おっさんが互いを美少女としてしか認識できなくなった」説”をみることになるとはw
  • 『小説・秒速5センチメートル』の破壊力について

    3編にわたるオムニバス形式で、初恋が記憶から思い出となり、思い出から心そのものとなる様を、驚異的なまでの映像美で綴っている。 ノスタルジックで淡く甘い展開を想像していたら、強い痛みに見舞われる。わたしの心が身体のどこにあってどのような姿をしているのか、痛みの輪郭で正確になぞることができる。予備知識ゼロで観てしまったので、徹底的に打ちのめされた。涙と鼻汁だけでなく、口の中が血の味がした(ずっと奥歯を噛みしめていたんだと思う)。初めて観終わったとき、それほど長い映画でもなかったのに(1時間とすこし)、疲労感で起き上がれなくなった(ずっと全身に力を込めていたんだと思う)。 何度も観ているうちに、「それを観たときの出来事」が層のように積まれていく。どんな季節に、誰と/独りで、何を思い出しながら観たかが、痛みとともに遺されていく。あるときは彼の気持ちになり、またあるときは彼女に寄り添い、観たという記

    『小説・秒速5センチメートル』の破壊力について
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    dododod 2016/07/15
    小説版もいいよね
  • この本がスゴい!2015

    「いつか読む」は一生読まない、いつ読むの? 人生は短いのに、読みたいが多すぎる。残り全部を注いでも、いまのリストは読みきれぬ。己の変化を確かめる、再読リストも増えている。今際に後悔しないため「読んでから死ね」が優先なのに、積まれるスピードさらに上。を通じて出会った人から教わったがまたスゴい。オフ会は危険な場、積読山がマシマシだ。それでも読むしかない、それも今しかない。 「このがスゴい!2015」は、この「今」を積み上げた一年間からピックアップしたもの。ネットや読書会を通じてお薦めされた作品もあれば、書店や図書館で「呼ばれた」もある。非常に愉しいのは、リアルで話し込んでいると、記憶の底からリレースイッチのようにタイトルが"発火"してゆくところ。完全に忘れてた、思いもよらない作品につながってゆく様は鳥肌もの。 世界は対話で拡張する。わたしが知らないスゴを"発火"させる、あなたが凄い

    この本がスゴい!2015
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    dododod 2015/12/02
    いきなり”『この美術部には問題がある!』”でおってなる
  • 男子は女子に絶対勝てない『からかい上手の高木さん』

    辛いことも、恥ずかしいことも、過ぎてしまえばいい思い出になるというが、あれは嘘だ。未熟ゆえの失敗、若いからと言い訳できない態度、許されない/許せない言葉など、重石をつけて封印してある。今でも触れるだけで血を流す思い出は、アニメや小説で育てた偽の記憶で上書きする。 これが、何かのはずみでうっかり思い出してしまうと、大変なことになる。恥ずかしさと甘酸っぱさにもみくちゃにされ、いたたまれなくなる。後悔に殺されるとはこういうこと。 『からかい上手の高木さん』は不意打ちだった。タイトル通り、好きな子にちょっかいを出すというラブコミなのだが、これが無限にニヤニヤできる。高木さんの「からかい」の手管が絶妙で、隣の席の「からかわれ」るほうの西片くんは掌のナントカ状態となっている。 「放課後ふたりで腕ずもう」とか「体操服を交換する」、「缶ジュースまわし飲み」「なんでもないことを手紙で伝えてくる(しかもハート

    男子は女子に絶対勝てない『からかい上手の高木さん』
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    dododod 2015/06/25
    ”封印したはずの地雷を踏み抜くか、誰もいない壁に向かってドンするか、選べるかどうかは分からない。”
  • 大学教師が新入生に薦める100冊

    ドカ読み上等!若さに任せて読みふけろ、読むべきを読み干すべし。 このリストは、以下の4500冊超の中から、読むべき100冊を選んだもの。だから、「大学新入生に薦める」というより、若かったわたしに読ませたいリストであり、もう若くないわたしが読むべきリストなのだ。しょうもない新刊ばかり追いかけて踊らされているわたしの目を覚まし、叱咤激励するリストなのだ。 書籍『東大教師が新入生にすすめる』文藝春秋編 書籍『東大教師が新入生にすすめる<2>』文藝春秋編 書籍『教養のためのブックガイド』小林康夫ほか 書籍『大学新入生に薦める101冊の』広島大学101冊のプロジェクト編 書籍『大学新入生に薦める101冊の 新版』広島大学101冊の委員会編 書籍『必読書150』柄谷行人ほか サイト[東京大学 学科別 分類による推薦図書] サイト[は脳を育てる 北大教員による新入生への推薦図書] TV番

    大学教師が新入生に薦める100冊
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    dododod 2014/06/18
    ……読む?
  • 『ヒストリエ』を10倍楽しく読む方法

    過去は確定してるから、あらゆる歴史はネタバレである。だが、「なぜそうなったのか」は時代によって違う。あるいは為政者の都合で改変される。 史家も人の子、自分が生きている時代の風潮というか要請に従い、歴史を書き直す。ネタは割れているのだが、その解釈が変わる。そういう意味では、あらゆる歴史はネタ割れである。ある事実が、それぞれの時代でどのように解釈されてきたかを辿ることにより、その時代が浮き彫りになる。 岩明均『ヒストリエ』は、アレクサンドロス大王を描いた傑作漫画(彼に仕えたエウメネスを主役にしているのがミソ)。未読なら強くオススメする「四の五の言わず、黙って読め」と。ただし、連載ペースがゆっくりしているため、「続きが読みたい病」に罹ること必至。ここでは、そんな患者の方々に、『ヒストリエ』を10倍楽しむための一冊『興亡の世界史 アレクサンドロスの征服と神話』をご紹介。 神か魔物か伝説か、毀誉褒貶

    『ヒストリエ』を10倍楽しく読む方法
  • 生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問『世界はなぜ「ある」のか?』

    一般的な解答は知ってたが、書にはなかった→[Googleに訊け]。他に、わたしなりの答えも持ってた(後述)。しかし、多岐のジャンルに渡り知的興奮を掻き立てる、「ごほうび」のような一冊だった。 なぜ「何もない」のではなく、「何かがある」のか? この究極の疑問に囚われた哲学者が、各分野の権威と対話を重ね、謎の質に迫ってゆく。実存哲学、形而上学、量子宇宙論、神仮説、数学的必然性などの分野を渉猟し、ワインバーグやペンローズ、アップダイクといった著名人とのインタビューを通じ、探偵のように「存在の謎」の犯人をあぶりだす(サブタイトルは、"An Existential Detective Story")。 面白いのは、真犯人へのアプローチそのもの。形而上学であれ、量子力学であれ、最初は一貫した説明がもたらされるが、探偵役に徹する著者の検証により、無限後退にハマるか、循環論法に陥る。形而上学的な説明に

    生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問『世界はなぜ「ある」のか?』
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    dododod 2014/06/04
  • ONEとKanonと『サクラカグラ』

    人生に、意味はないけど、甲斐はある。わたしは、様々な「生きてて良かった」に生かされている(密かに"業/ごう"と呼んでいる)。囚われているから、あゆんでいける。 これに書も入る。見かけたとき、目を疑って、飛び上がって、それから踊った。「永遠はあるよ、ここにあるよ」に初めて触れた感情や、「それでは最後のお願いです、ボクのこと、忘れてください」を耳にしたときの感覚がよみがえる。物語に呑みこまれ、もみくちゃにされ、撃たれた記憶が戻ってくる。『ONE』『Kanon』の脚を書いた久弥直樹の、初の長編小説がこれなのだ。 ピンと来ない人向けに言うと、「確定スゴ」。この人が書いたなら、読む前からスゴだと確信できる。ほとんどは死んで評価が定まった作家に対するものだが、生きてる人には珍しい(デビュー作にしてスゴは希少)。編集者も分かっているようで、フルカラー印刷のイラストや、ブルーの栞などチカラ入れま

    ONEとKanonと『サクラカグラ』
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    dododod 2014/05/19
  • 『科学革命の構造』はスゴ本

    科学の大発見をしたときの最初の言葉は、「エウレカ!(見つけたぞ)」ではなく、「こりゃおかしい」だ。なぜなら、「正しい」フレームワークがあってこそ、そこから逸脱していることが分かるから。この「正しい」とされるフレームワークが、パラダイムだ。 これは、「科学とは何か」について質的なところで答えた名著。科学における「進歩」について新たな見方をもうけ、コペルニクスやニュートン、アインシュタインが人類にもたらした「知」を問い直す。ただし、科学を純朴に信仰する人にとっては劇薬級だろう(あるいは、いちゃもんつけて理解を拒むかもしれぬ)。なぜなら、何か統一理論みたいなものがあって、そこへ連続的に進化していくような「科学」について、疑問を投げかけ、揺さぶってくるから。読書猿さんの強力なリスト「何を読もうか迷った時のために→Googleが選ぶ世界の名著120冊(2013年版)」でトップにあるのも分かる。科学

    『科学革命の構造』はスゴ本
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    dododod 2014/02/07
  • 宿題を終わらせる『論理哲学論考』

    ようやく読めた。岩波青で適わなかった宿題が、やっとできた。新訳はとても読みやすく、かつ、驚くだろうが理に適ったことに、横組みなのだ。 そもそもこれは、どういうなのか、なぜこれが20世紀最大の哲学書なのか、そして、ずっとたどり着けなかったラストが、なぜ「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」で終わっているのかが、わかった。わたしが難しく考えすぎていたんだ。 これは、数学なんだ。 哲学的なことについて書かれてきたことの大部分は、意味がないという。なぜなら、「哲学的なことについて書かれてきたこと」は、言語を使っているから。プラトン以来、西洋哲学の歴史は、言語の論理を理解していないことによるナンセンスな言説の積み重ねなんだと。なぜなら、「言語の論理を日常生活から直接引き出すことは、人間にはできない(No.4.002)」から。 このあたりの説明は、書の冒頭にある野家啓一「高校生のための『論

    宿題を終わらせる『論理哲学論考』
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    dododod 2014/02/03
    ”ラストが、なぜ「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」で終わっているのかが、わかった。””これは、数学なんだ。”
  • この本がスゴい!2013

    人生は短く、読むは尽きない。 せめて「わたし」が知らない凄いと出合うべく、それを読んでる「あなた」を探す。このブログに込めた意味であり、このブログを通じて数え切れないほど「あなた」に教えてもらった。 ともすると自分の興味を森羅と取り違えがちなわたしに、「それがスゴいならコレは?」とオススメしてくれる「あなた」は、とても貴重で重要だ。そんな「あなた」のおかげで、ネットやリアルを通じて出会い、ここ一年で読んできた中から選りすぐりを並べてみる。 なお、ここでの紹介は氷山の一角、一番新しくアツいのは、facebook「スゴオフ」を覗いてみてほしい。読まずに死ねるか級がざくざくあるゾ。 フィクション ■ 『東雲侑子は短編小説をあいしている』 森橋ビンゴ(ファミ通文庫) ラノベを読むのは、存在しなかった青春を味わうため。 「いいおもい」なんて、なかった。劣等感と自己嫌悪に苛まれ、屈した日々が終

    この本がスゴい!2013
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    dododod 2013/12/01
  • アイドルは殺されなければならない『金枝篇』

    100年前、英国のフレイザーによって著された『金枝篇』を読むと、「王殺し」は世界的に共通な風習であることが分かる。そして、現代では王の代わりに「アイドル」が、その役割を果たしていると考えることができる。 物語作家にとって、『金枝篇』は宝の山だ。人類学・民俗学・神話学・宗教学の基書であり、世界中の魔術・呪術、タブー、慣習、迷信が集められている。スケープゴート、死神の追放、外在魂、樹木崇拝、王と祭司のタブー、王殺し……おびただしい事例と、膨大な文献の引用で成り立っており、「からできた」という異名の通り。 物語背景や世界観、ガジェット、仕掛けとなる材料がてんこ盛りで、たとえば『まどか☆マギカ』のソウルジェムは、「民話における外在の魂」の章に出てくる「ソデワ・バイの首飾り」から拝借しているだろうし、シャーリイ・ジャクソン『くじ』は、「スケープゴート」の章で紹介される風習そのままだ。独創的であ

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    dododod 2013/09/23
  • 読んで悶えろ『東雲侑子は短編小説をあいしている』

    ラノベを読むのは、存在しなかった青春を味わうため。 「いいおもい」なんて、なかった。劣等感と自己嫌悪に苛まれ、屈した日々が終わることを、ひたすら望んでいた。苦くて痛々しいわたしの恋を、甘くてしょっぱい味付けで上書き保存するために、恋物語を読むのだ(妄想だって経験だ)。 そういう意味で、東雲侑子の三部作は素晴らしい。 無気力で無関心な主人公は、まんま「わたし」だし、いつも独りでを読んでる彼女は、あのとき好きだった“誰か”になる。照れ屋で臆病な二人の、不器用で未熟な恋に、好きなだけ投影できる。ラノベの体裁をしてラノベらしからぬリアルな設定と、文芸の王道を往く技巧的な構成に、完全に撃たれる。のめり込んで舌を巻いてキュンとなる。 彼女がある秘密(それも、現実にありそうな秘密)を抱えてて、偶然に知ってしまった主人公とのバーターから成る仮面恋愛にハラハラさせられる。どっこいわたしは(もちろん皆さん

    読んで悶えろ『東雲侑子は短編小説をあいしている』
  • 『神々の山嶺』は徹山小説

    徹山小説=徹夜するほど面白い+山岳小説。 上下巻の1000頁、一気に読める・止まらない。2ちゃんねらが絶賛してて、blogやfacebookで猛烈プッシュされ、「さすがにハズれないだろう」と気軽に手にしたが運の尽き。 前人未到の「エベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂」に挑む伝説のクライマーを描いた話なのだが、ラノベのように軽やかに青臭く、おっさんたちの生きザマを泥臭く描く。読むと心の奥に火が点けられ、ずっと昔に封印した「自分は何のために生きているのか」そして「自分が当にやりたかったこと」を沸々と思い出す危険な副作用がある。 しかも、ただ「山に登る」だけを単線的に描いていない。ジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂を成し遂げていたか、という登攀史上最大の謎解きに呑み込まれたり、陰湿で痛々しい人間関係のドロドロに絡みつかれたり、生活のために夢を矮小化させている自己欺瞞を暴かれたりと、なかなか忙

    『神々の山嶺』は徹山小説
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    dododod 2013/06/16
  • 論破の快感『ダンガンロンパ』

    言葉で相手をやっつける快楽。この悦びは性的なものに近い。 言葉尻を捕えてやり込める。レトリックを弄して丸め込む。論理矛盾を突く。感情を込めた表現による人格批判―――リアルでは封印している言論術を駆使して、「学級裁判」を勝ち抜くPSPのゲーム。『ダンガンロンパ』は快感論破なり。 家でも会社でも、「相手を論破する」ことに注力すると、必ずしこりが残る。会議の議論であれ、夫婦の会話であれ、ゴールは「正しさ」ではなく、「妥当さ」。だから、論破は御法度になる。「真実はいつも一つ」だが、解釈は無数。痛い思いをくり返し、口チャックができるようになった。これがオトナになること。 しかし、このゲームではコドモになる。主張の弱点に狙いを定め、矛盾点を「発射」する。相手の詭弁テクニック「早まった一般化」や「類推のミスリード」の、まさに要(かなめ)の言葉を粉砕する。カ・イ・カ・ン。 さらに、「悪魔の証明」が突きつけ

    論破の快感『ダンガンロンパ』
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    dododod 2013/05/30