【書評】『レクイエムの名手 菊地成孔追悼文集』菊地成孔著/亜紀書房/1800円+税 【評者】坪内祐三(評論家) 山下洋輔や坂田明らを始めとしてジャズミュージシャンには名文家が多い。菊地成孔もその一人だ。ただし山下氏や坂田氏の名文が、その音楽と同じく、破調であるのに対し、菊地氏は、破調ももちろん、オーソドックスな名文家でもある。その「オーソドックスな名文」が冴え渡るのは追悼というジャンルであり、そのことを本書『レクイエムの名手』が証明している(あえて「名手」と名乗るところが菊地さんらしい)。 五十本以上の追悼が収められているが、ジャズ関係者(その中には植木等、谷啓、桜井センリと言ったクレイジー・キャッツのメンバーも含まれる)、肉親、格闘家(カール・ゴッチ、エリオ・グレイシー、三沢光晴)さらには立川談志、団鬼六、加藤和彦、今野雄二といった人びとだ。 感銘(あえてこのような凡庸な言葉を使いたい)