東京都内に住む在日韓国人3世の男性が、福岡市内にある出身高校の同窓生からSNS上で「ヘイトスピーチ」を受けたとして、110万円の損害賠償を求める裁判を東京地裁に起こした。提訴は3月29日付。この日、原告と代理人が都内で記者会見を開いて明らかにした。(ライター・碓氷連太郎) ●50年来の友人が「実名顔出し」で誹謗中傷を始める 原告の金正則さん(69歳)によると、被告となったAさんとは、敬称なしで呼び合う仲で、ともに福岡市にある名門高校を卒業したあと、東京の大学に進学した。大学卒業後はどちらも都内で仕事を始め、同窓会で交流を続けてきたという。 定年後、地元に戻ったAさんは、実名・顔出しで、X(旧ツイッター)やフェイスブックに在日韓国人などへの「ヘイトスピーチ」投稿を続けていた。見かねた金さんが2018年に帰省した際、地元ホテルのラウンジでAさんと会って、友人として投稿をやめるように注意した。
大阪地裁で5月30日、ICレコーダーで法廷録音をしようとした弁護人が、裁判官の退廷命令に応じず拘束される事態が起きた。 傍聴していたライターの普通氏によると、中道一政弁護士は手錠をかけられ、職員ら3人に抱えられるような姿になり、拘束室に連行されたという。 岩﨑邦生裁判長は法廷等の秩序維持に関する法律4条1項に基づき、制裁裁判を午後から行い、過料3万円を言い渡した。弁護人の制裁裁判について、最高裁の「令和3年の刑事事件の概況」によると、2017〜2021年はゼロ。制裁裁判自体も2019〜2021年は1〜2人で、極めて異例とみられる。 ●裁判官との応酬後、3人に連行される 事態が起きたのは、午前11時30分からのストーカー行為等の規制等に関する法律違反の罪に問われた女性被告人の公判。記者はおらず、傍聴席に数人いるのみだった。ただ、普通氏は「開廷前から多くの職員が控えていて物々しい雰囲気だなとは
2022年10月、JR常磐線をめぐる異例の訴訟が提起されました。原告は50年来、不当な運賃格差があると疑問を持っていた金町駅や亀有駅を中心とした下町の沿線住民。JR、東京メトロ、国に対して賠償を求めています。ユーザーでないと分かりにくい複雑な問題。なぜ、放置されてきたのかー。鉄道工学の専門家・曽根悟東大名誉教授に解説してもらいました。 千葉県北西部から東京都の東部・葛飾区や足立区を通って都心に向かう常磐線は、1971年に営団地下鉄(現東京メトロ)千代田線直通になりました。上野などに通じる快速線は金町・亀有を通過し、JRだけで都心に行くには北千住での乗り換えが必要となりました。 西日暮里乗り換えが簡単ですが、JR、メトロ、JRと初乗り運賃を二重に取られることで、JRだけで行くよりも割高になってしまいました。特に駅によっては距離が近いにもかかわらず、2倍以上の差が出ています。交通費支給がある会
図書館司書やハローワークの職員ら、非正規の公務員が低賃金・不安定雇用に陥る「官製ワーキングプア」の問題が近年、社会的に注目されるようになった。しかし公務員の非正規化には歯止めがかかるどころか、むしろ加速していると立教大コミュニティ福祉学部の上林陽治特任教授は指摘する。 背景には、公務員を取り巻く厳しい環境変化とともに、職務を限定せず異動を繰り返して出世していく正規雇用の職員を中核に、そして専門性の髙い人材や女性を周縁に位置付けてきた「日本型雇用システム」の問題もあるという。待遇改善には何が必要かを、上林氏に聞いた。(ライター・有馬知子) ●定数削減で専門職を非正規に置き換えるようになった ――公務員の非正規化は、どのように進んできたのでしょう。 政府は1997年、公務員の定数削減に伴い、ジョブローテーションとOJTで職員一人一人の業務範囲を広げる方針を打ち出しました。これによって自治体が相
国内の宗教研究者有志の25人が、国に対して世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する適切な対応を要望する声明を出した(10月24日付)。 東京大の島薗進名誉教授と北海道大の櫻井義秀教授が10月28日、都内で会見。統一教会問題は長期にわたって被害が続き、違法性を認めた裁判が既に多数ある特異な団体だとし、研究の蓄積や判例に基づいて、実態を整理すべきだと訴えた。 声明には迅速な動きを求める文言があるものの、会見では政治の性急な動きにたいして慎重な意見が目立った。質問権の基準を決める専門家会議が非公開であることなどを挙げ、宗教法人法に基づく法的手続きは「適切に、公正に、透明性を持って」と注文した。 ●研究者として見解示す責任ある 櫻井氏によると、25人は国内の宗教研究関連の大学はほぼ網羅しているという。宗教学者が連名でこうした声明を出すことは異例で、島薗氏は「日本宗教学会が2018年のゲノム編集の
ジャーナリストの伊藤詩織さんを誹謗中傷するツイートに「いいね」を押したことが伊藤さんの名誉感情を侵害したとして、自民党の杉田水脈衆院議員に慰謝料など220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10月20日、東京高裁であり、石井浩裁判長は、請求を棄却した1審・東京地裁判決を変更し、杉田議員に55万円の賠償を命じた。 ツイッターの「いいね」で不法行為を認めた判決は初めてとみられる。 ただ、代理人の佃克彦弁護士は「この判決が『いいね』が不法行為になったという先例として世の中に広まっていくのは本意ではない。特定の事例における判断で、人の悪口に『いいね』を押せば損害賠償と言っている判決ではない」と強調した。 ●「特定の事例における特定の判断」 名誉感情侵害は、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められるかどうかが判断基準となる。 石井裁判長は、「いいね」を押す行為が名誉感情を侵害するか
日系アメリカ人のミキ・デザキさん制作の映画『主戦場』で、著作権などを侵害されたとして、ケント・ギルバートさんら保守派の出演者5人が映画上映の差し止めと1300万円の損害賠償をデザキさんと配給会社に求めた裁判の控訴審判決が9月28日、知財高裁であった。東海林保裁判長は請求を棄却した1審判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。(ライター・碓氷連太郎) ●知財高裁も「引用として適法」と判断した 2019年4月に公開された『主戦場』は、SNS上で話題になったが、原告側は「映画は大学の修士卒業のためのプロジェクトと聞いていて、商業映画になるとは思っていなかった」「デザキさんは出演者たちをだまして取材に応じさせた」「原告らに「歴史修正主義者」「否定論者」「ナショナリスト」「極右」「性差別主義者」などの字幕を重ねた」行為で、原告の著作権および著作者人格権を侵害しているなどと主張した。 これらはいずれも、裁
民事裁判の全判決をオープンデータ化する構想が進んでいる。9月3日におこなわれた弁護士業務改革シンポジウム(主催・日弁連)の第1分科会で、平岡敦弁護士が「かなりの確度で実現するのではないかという状勢になってきている」と報告した。 民事判決のオープンデータ化については、日弁連法務研究財団が裁判所などと調整している。実現に向けた具体的な話が進んでいるといい、すでに法務省が法改正のための検討会を開くという報道も出ている。 平岡弁護士によると、まだ構想段階ではあるが、裁判所からの民事判決を収集・管理する法人を新設し、AIによる仮名化を施したうえで、法律出版社や研究機関などに有償提供するという運用案が考えられているという。 日弁連法務研究財団の資料より(2021年3月25日:https://www.jlf.or.jp/wp-content/uploads/2021/04/pt-houkoku20210
「親ガチャ失敗」の子どもは、大学に行けないのかーー。仙台市の太田伸二弁護士らが、家庭の虐待等で困窮する大学生を生活保護の対象とするよう厚生労働省に訴える署名活動を展開している。現在の制度運用で大学生は排除されており、受給するならば休学・退学するしかない。 地方の国立大で美術を学ぶ儚さん(21歳)は、実家の生活保護世帯から進学した。奨学金を活用し、深夜までのアルバイトと課題をこなす毎日で体を壊し、休学している。 儚さんの元には、親に受験費用を払ってもらえないという中高生が相談を寄せる。「私も同情されたくなくて、先生や行政には相談せず『普通』を装っていました。こういう子どもの存在を知ってもらいたい」と話し、貧困の連鎖を断ち切れるような制度を求めている。 ●過労で倒れるほど働いた金を抜き取る母 儚さんは2020年、コロナ下での入学だった。一人暮らしの自宅でオンライン授業を受け、夕方からは書店や居
国葬まで約1週間となった9月19日、東京大で「シンポジウム国葬を考える」が開かれた。「国葬を行う法的根拠」「安倍晋三氏が国民的追悼に値する政治家か」について学者や弁護士ら6人の識者が検討した。 主催した哲学者の國分功一郎教授は「公文書改ざんなど社会全体のモラルを崩壊させた安倍政権。国葬に対して何も言わなければ、この政権の完成に手を貸すことになってしまう」と問題意識を説明した。 自民党の二階俊博氏はテレビ番組で「黙って見送ってあげたらいい。国葬がどうだこうだなんて、議論すべきじゃないんだよ」などと発言したとされる。憲法学者の石川健治教授は「『考えなくていい』に抵抗しなきゃいけない。簡単に結論にいかずに、何が起きているのかを考え抜くことが大事だ」と強調した。 ●「天皇や安倍晋三という固有名で語らず、とことん考えることが必要」 國分氏と石川氏、政治思想史を研究する片山杜秀慶応大教授が、国葬の意味
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る議論や指摘で抜け落ちている点がある。それは、旧統一教会の伝道・教化活動そのものが、国民の思想信条の自由を侵害する違法行為であるとする判決が確定していること、すなわち憲法違反という認識だ。 その判決を1987(昭和62)年から14年間かけて勝ち取り、以降も違法伝道を白日の下に晒してきた第一人者が札幌にいる。 現在も3件の訴訟を闘い続ける旧統一教会の不俱戴天の敵ともいうべき郷路征記弁護士(全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人)に聞く。 (ジャーナリスト・本田信一郎、文中敬称略) ●信仰の自由侵害を提起した弁護士はただ一人 ――(旧統一教会の伝道・教化活動は)社会的にみて相当性が認められる範囲を逸脱した方法及び手段を駆使した、原告らの信仰の自由や財産権等を侵害するおそれのある行為であって、違法性があると判断すべきものである――。 これは郷路征記が1987
自民党の国会議員が参加した6月の会合で、「同性愛は後天的な精神の障害、または依存症」などと書かれた冊子が配られたことに対し、「LGBT差別冊子の対応を求める有志の会」(有志の会)が7月25日、冊子の回収などを求めた署名5万1503筆を自民党本部に郵送で提出したことを明らかにした。 会合は6月13日に開かれた「神道政治連盟国会議員懇談会」で、出席者に配布された冊子には、「(LGBTの)⾃殺率が⾼いのは社会的な差別があることが原因かというとそうではありません」、「同性愛を擁護する教育をすれば同性愛者は増える」などと書かれていた。 都内で開かれた会見で、有志の会の呼びかけ人で一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんは、「いずれも事実として間違っており、明確に差別的な⾔説といえます。同性愛は精神障害や依存症ではなく、異性愛へと矯正しようとする転向療法は暴⼒的な⼈権侵害です」と話した。(ライター・
名古屋入管で昨年3月に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの妹、ポールニマさんが、短期から長期の在留資格への変更を申し立てたところ、東京出入国管理局長が8月3日、不許可としたことがわかった。 ポールニマさんともう1人の妹ワヨミさん、その代理人が同日、都内で記者会見を開いて明らかにした。ポールニマさんらは現在、ウィシュマさんの死について真相究明をもとめる国家賠償訴訟を起こしているが、その裁判への参加に影響を与えかねない事態となった。 ●在留資格「特定活動」への変更が認められなかった ポールニマさんは昨年5月に来日。当初は長期滞在の予定はなかったが、ウィシュマさんが亡くなった当時の映像や資料を渡してもらえず、真相究明もされていないため、日本に残って国賠訴訟に参加・発言している。 これまで短期滞在の在留資格を3カ月ごとに更新してきたが、今年5月の更新時、東京入管から「短期滞在の更
「メディアで統一教会の問題を取り上げると、抗議の電話が殺到する」という話がある。 一般論として、センシティブなテーマを報じることでテレビ局に抗議電話が殺到することは珍しくない。残念ながら、その影響で取り上げづらくなるということもありえるのが番組制作の現実だ。 テレビ局が怖気づいているように見えるだろうが、筆者はもっとテレビ制作にかかわる構造的な問題があると考えている。とはいえ、視聴者の信頼を裏切る行為であることには変わりない。テレビ局はどう対応していくべきか、考えてみたい。(テレビプロデューサー・鎮目博道) ●抗議電話の殺到 今月18日、テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』にジャーナリストの有田芳生さんが出演した際、有田さんが「政治の力」で統一教会の摘発が見送られたと語り、スタジオの空気が凍りついたようになったことが話題になった。 私はテレビ朝日のOBであり、『モーニングショー』の前身番
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