東日本大震災の被災地に、復興の理想と現実が交錯する。発生から6年半、崩壊した風景の再建は進んだが、住まいやなりわいの足元は固まっていない。宮城県知事選(10月5日告示、22日投開票)は、復興完遂に向けた道筋が争点となる。「フッコウ」の掛け声が響く中、沿岸には被災者の苦しい息遣いとやり場のない嘆きが漂う。 ◎2017宮城知事選 <「同じ光景困る」> 「知事選があるから、むしろ旗を立てて県庁に座り込んでもいいんだぞ」 牡鹿半島西部の表浜港に宮城県が計画する防潮堤を巡り、県漁業協同組合の表浜支所(石巻市)で8日にあった意見交換会。海抜6メートル、総延長708メートルの規模に住民の不満が噴出した。 「高すぎて海が見えない。下げてほしい」と再考を求める意見に対し、県の担当者は「科学的実証に基づいた高さは変えない」と拒否。溝は埋まらなかった。 半島東部の県道沿いには防潮堤が徐々に姿を表し、かつて望めた