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圭子の夢は夜ひらく - エスカルゴ
圭子は夜になるとひらいた。それは彼女の意志と関係なく「そうなる」のだった。さいしょのころは僕もそ... 圭子は夜になるとひらいた。それは彼女の意志と関係なく「そうなる」のだった。さいしょのころは僕もそれがめずらしくて、ゆっくりとひらいていく圭子を見詰め、飽きるまで観察した。エロティックな比喩のつもりなんかではなく、ほんとうに、ゆっくりと、すももの花弁のように圭子はひらいた。ぼんやりとした間接照明に照らされて白い圭子は毎晩美しくひらくのだった。 そのうち、というかわりとすぐに僕は圭子がひらくことに慣れた。日が落ちると彼女はひらくのだ、イッツ・オートマティック。会社から帰ってくるといつも圭子はひらいていて、僕はその姿をとくべつ美しいとも思わなくなった。ひらいた圭子はなにも言わない。 ダイニングの椅子に上着をかけて冷蔵庫から缶ビールを取り出す。引き戸の向こうの圭子に目を遣る。圭子はこちらを向いているが視線がぶつかることはない。ひらいた圭子は口を聞かないし、目線はずっと宙に浮いたままだ。 テーブルの