もの言う翔年(ﾕﾘｳｽ):風説の流布 −三島由紀夫の松の木

『行為にあらず、行為に関する意見こそ、人を動かすものぞ。』 -ｴﾋﾟｸﾃｰﾀｽ- Since December 2003 もう古い昔のことながら、かつて「作家の三島由紀夫は松も知らないほど植物に疎かった」という風評があった。どこで読んだのか定かではないが、翔年は直感的に「そんなバカな！」と強く感じたので、この中味のことはよく覚えている。 昨日、偶然に塚谷裕一著「漱石の白くない白百合」のなかで、多分この一文ではないだろうかと思える文章に出あった。（塚谷氏＝東大基礎生物学研究所教授） １ 1975年（昭和50年） 三島由紀夫の取材旅行にドナルド・キーン氏が同行されたときのエピソードです。 『三島が松の木を指差し、居合わせた植木屋に何を言うかと思ったら、「あれは何の木か」などと聞いたので、植木屋は「松です」と答えた。しかし、いくらなんでも松の木を知らないはずはないだろうと、植木屋は「雌松と呼んで