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トッド・ヘインズの『キャロル』を観る前に読んでおきたい淀川長治の『太陽がいっぱい』話 - 真夜中の映画&写真帖
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トッド・ヘインズの『キャロル』を観る前に読んでおきたい淀川長治の『太陽がいっぱい』話 - 真夜中の映画&写真帖
トッド・ヘインズの『キャロル』が評判のようだが、これは僕が去年に観たなかでも特に気に入った映画だ... トッド・ヘインズの『キャロル』が評判のようだが、これは僕が去年に観たなかでも特に気に入った映画だった。 いまは遠い時代のラブストーリーであり、同時に一人の女性の成長物語である。女性とデパート、レコードとラジオ、カメラとフィルム、非米活動委員会と盗聴――保守と抑圧の50年代を柔らかに胸を締めつけるような緊張美で飾りつけて洗練を極め、たまらなく魅惑的だ。全編が名演技、名演出の連なりからなり、撮影、衣装、美術、音楽に至る入念な時代考証とその繊細な表現力が観る者に「現在」を忘れさせる。ヘインズは当時のフォト・ジャーナリズムを参考にし、同時にデヴィッド・リーンの『逢いびき』を引き合いに出していると語るが、これは、社会的、政治的な抑圧と困難に直面したアウトサイダーのソウルを描き続けるヘインズの新たな到達になった。心許なく華奢な身体で人の現実を凝視する才能を秘めるルーニー・マーラと孤独で誇り高くゴージャ