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マロカン(壱)
───私は今年で紀寿を迎える。 共に時代を生きた人々は、すでにこの世から姿を消した。紀寿と言えば百歳... ───私は今年で紀寿を迎える。 共に時代を生きた人々は、すでにこの世から姿を消した。紀寿と言えば百歳なのに実感がまるで湧かない。すでに女房と息子は他界した。女房は九十三歳。息子は八十歳で天に召された。人として、ふたりとも長く生きられたと私は思う。人生なんて、それだけ生きれば十分だ。生きれば生きるだけ、長く辛い日々が続くのだから。年老いた動けぬ体で楽しいことなど何もない。長生きなんて先への不安が募るだけなのだが、私の事情は少し違った。 五十歳を過ぎてから、私の見た目がまるで変わらないのだ。身体能力も変わらない。肉体労働だって普通にできるし、私の勇者も朝日と共に立ち上がる。私の意思に逆らって、毎朝、ビンビンに立ち上がるのだ。その秘訣を多くの人が聞きにくるのだが、私にもその理由が解らない。ゆっくりと、でも確実に……若返っている気さえもしている。とはいえ、この身体的特性が私の生活を支え始めた。 仕