嵐のあとで｜稜

あなたがいなくてもけっこうしあわせよ、なんて言わないけど、あなたがいなくなっても僕は死ななかった。 そのくらいには、きっとしあわせで、そのくらいには、きっとふしあわせで、それをぜんぶ花束にして、結ぶの、茎がぜんぶ折れてしまう、ほんのすこし手前で、動脈と静脈を束ねて、いちどだけ、深く息をする、それだけでいいから。それだけで僕は、僕になりきることができてしまう、きみをうしなったことなんてわすれて、ほかの人にもわすれさせて、僕を演じ続けることが、できてしまう。きみも、そうかい、きみは、ぼくをうしなっても、きっとなにも変わらないまま、いきているのだろうなと思うと、そんなこと、なかったとしても、泣くよ、きみが笑うのと同じくらい、涙にぜんぶを託して、ぜんぶ、こころのなかを溶かしてしまおう。そうすればきっと、もうなにも起こらないから、いつか星になるぼくたちは、星のかけらとしてただよって、さまよって、ねえ