理想の人生から外れていく恐怖が深まる今 姜尚中さんが見いだす幸せ：朝日新聞デジタル

政治学者で東京大名誉教授の姜尚中さん（72）は、ベストセラーとなった「悩む力」や、近著「生きる意味」「それでも生きていく」などを通じ、人生に悩む読者の道しるべとなる考え方を優しく語ってきました。2023年を前に、いまの時代の「幸せ」について聞きました。 ――人生相談を通じて幸福の問題にずっと向き合っています。 朝日新聞の別刷りbeの「悩みのるつぼ」で回答を担当し、間もなく5年になります。人間の悩みはいつの時代も変わらない、と感じます。芥川龍之介は短編「蜜柑（みかん）」で、平凡な出来事ばかりに追われる人生を凡庸で愚かだとさげすむ主人公を登場させ、やがてその凡庸な愚かさの中に生の本質があることに気づく鮮やかな場面を描いています。私も人生相談の回答者として、上から目線で「ああしろ、こうしろ」と言うのではなく、自分もまた同じ愚かな人間の一人として相談に寄り添い、ガイダンス役をする気持ちで続けていま