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写経の功徳 - pêle-mêle
大岡昇平の『ザルツブルクの小枝』の「ギリシア幻想」を読み返していたら、こんな一節があった。 アテネ... 大岡昇平の『ザルツブルクの小枝』の「ギリシア幻想」を読み返していたら、こんな一節があった。 アテネに着いて、最初に気がつくのは、ヨーロッパの都市の広場に、あれほど醜悪な感じを与えるバロックがないことだ。 (中略) ギリシャにあるビザンチンの会堂はみんな可愛らしい。かつてエーゲ海を乗り廻していた海賊は、国亡びて後、つつましい片隅の幸福に満足したのである。 おっと、日本的な「かわいい」美学とは無縁の文学者のように思える彼でさえ、こうした文章を書いていたとは。 しかしこのように他人の文章をきちんと「写経」するのは、ネット上に公開されている文章を安易にコピー・アンド・ペーストするのとは違った効用がある。自分が知らず知らずのうちに身に付けている文体を客観視する契機になるからだ。正確に引用しているつもりでも、知らず知らずのうちに自分の好みの言いまわしに無意識的に変えていることがあり、そのたびに思考パタ