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「こころ」/夏目漱石についての読書感想文その4(自殺という箱の、表面と中身の問題)
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「こころ」/夏目漱石についての読書感想文その4(自殺という箱の、表面と中身の問題)
我々人間存在は生死という運命によって支配されている。その支配から抜け出さなくてはならぬ、そう考え... 我々人間存在は生死という運命によって支配されている。その支配から抜け出さなくてはならぬ、そう考えたその人は銃で自らを撃ち抜いて死んだ。しかしこれが全然大した話にならなかった。運命に対する挑戦であり、人間に与えられた運命の克服……という名目でやったことは単なる自殺だったと。いかにも偉大なことをしでかしたようでありながら、その実やってることは自殺と変わらず、しかも自殺なら自殺でそれなりの意味がありそうなものだが、この場合にはそうした意味性を何一つ見つけることができない。最初から人の運命を超越するとか言っているわけだから、それ以上の意味をもはや見つけようがない。つまりは無意味さの極致という形の自殺をしたと。その結果、自殺者の狙いとは違って偉大さの極致どころか無意味さの極致を体現してしまった。あの話なんだったかなあ。 ・その話というのはこの「こころ」の下地として描かれているテーマでもあるのではない