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  • インフォコモンズ - 池田信夫 blog

    著者とは個人的なつきあいもあるし、よくを贈ってもらうが、だからといってほめないのが当ブログの冷酷なところ。残念ながら、書は「コモンズ」という基コンセプトからして間違っている。 コモンズというと恰好いいが、日語に訳すと入会地である。典型的には山林や漁場のように共同利用する資源で、経済学ではcommon pool resourcesとよぶ。これは排除不可能で競合的な資源のことで、「コモンズの悲劇」が起こることが知られている。しかしウェブは、この意味でのコモンズではない。情報は排除不可能だが非競合的だから、コモンズではなく公共財なのだ。この点は、セミナーでLessigにコメントし、彼も認めた。James LoveやWerbachなども、最近はpublic goodsという言葉を使っている。 コモンズというのは、著者が理想化するほど美しい世界ではない。むしろ前近代の日では総有制という

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    eureka1 2012/04/18
    コモンズではなく公共財なのだ。この点は、セミナーでLessigにコメントし、彼も認めた。
  • 著作権は財産権ではない - 池田信夫 blog

    私は法律の専門家ではないが、著作権の延長問題やWinnyに関する議論をみていると、賛否いずれの立場にしても、著作権に関する基的な知識(素人でも持っておくべき知識)が共有されていないように見受けられる。そこで「法と経済学」の立場から、実定法にはこだわらず著作権の基的な考え方について簡単にメモしておく。 まず確認しておかなければならないのは、著作権法は憲法に定める表現の自由を制限する法律だということである。これはもともと著作権法が検閲のために設けられた法律であることに起因するが、複製を禁止することは出版の自由(freedom of the press)の侵害であり、自然権としては認められないという見解もある。著作権の根拠として創作のインセンティヴという自然権として自明ではない理由があげられるが、これを認めるとしても保護の範囲は最小限にとどめるべきである(森村進『財産権の理論』弘文堂)。

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    eureka1 2012/04/18
  • 所有権のドグマ - 池田信夫 blog

    教科書を書評するのは初めてだが、書はそれぐらいの価値がある。これが著者のような大御所の初めての著作権の教科書というのは意外だが、今後のスタンダードになるだろう。しかし大御所の教科書にありがちな前例踏襲型ではなく、時代の急速な変化に著作権法が追いついていないことを認識し、それをどう是正するかという未来志向型で書かれている。たとえば序章で、著者はこう問いかける:デジタル化の波は著作権法制に極めて大きな影響を与えていると考えられる。著作権法を所有権法制の枠内で捉え、その微修正でその場しのぎをしている現状は大きく変更されなければならないのかもしれない。万人が著作物の複製・改変をし、発信をする時代において、著作権法システムが従来のように所有権のドグマに捕らわれていたのでは、情報の利用にとってマイナスとはならないのか。(p.9、強調は引用者。以下も同じ)この「所有権のドグマ」についての著者の問題意識

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    eureka1 2012/04/18
    物権的構成が唯一のものではなく、対価請求権的な構成も可能である
  • [中級経済学事典] 長期的関係と戦略的行動 - 池田信夫 blog

    人は戦略的行動が苦手だとよくいわれるが、その原因はゲーム理論でよく知られるフォーク定理で説明できる。これは経済学部の学生なら知っているが、90年代以前に勉強した人には何のことかわからないようなので、簡単に説明しておこう。長文でテクニカルなので、ゲーム理論に興味のない人は読む必要はない。 ゲーム理論というと、囚人のジレンマぐらいは知っている人が多いだろう。これは図のように、2人のプレイヤーが協力(C)するほうが裏切る(D)より望ましいのだが、合理的に行動すると両方とも裏切ることがナッシュ均衡になるゲームだ: このパラドックスは、1回限りのゲームを考えるかぎり避けることができないが、ゲームが無限回くり返されるとすると、避ける方法がある。プレイヤーAが一方的に裏切ることによって得られる一時的利益は3だが、2回目のゲームからは相手のプレイヤーBも頭にきて裏切ると、両方とも利得は1になるから

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    eureka1 2009/10/15
  • 原丈人氏の奇妙な「公益資本主義」 - 池田信夫 blog

    原丈人というベンチャー・キャピタリストが最近、霞ヶ関では人気らしい。アメリカ投資活動をしながら「市場万能主義」や「株主万能主義」を批判しているからだろう。彼は先週と今週の週刊ダイヤモンドに、複数の共著者とともに「公益資主義の確立に向けて」と題する論文を発表しているが、その議論は根的に誤っている。彼はおなじみの囚人のジレンマの利得行列を説明し、両者が裏切る場合の利得を各2万円、両者が協力する場合は各3万円と仮定して、こう書く:両プレイヤーが合理的になれば、共に裏切る戦略で[それぞれ2万円を得て]、右下のゼロサムになる。[・・・]しかし社会全体で考えれば、すなわち公益を考えれば、協力し合って、それぞれ3万円、合計6万円を得るプラスサムがよい選択だ。この文章が誤っていることは、経済学部の学生でもわかるだろう。そもそも2人のプレイヤーが各2万円を得るのに、なぜ「ゼロサム」なのだろうか。原氏の

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    eureka1 2009/10/15
  • 技術への問い - 池田信夫 blog

    書は、ハイデガー晩年のもっとも重要な論文「技術への問い」を中心にして5の論文を集めたものである(復刊)。最初に断っておかなければならないのは、訳があまりにもひどく、とても通読できないということだ。たとえば有名な、技術をGe-stellという奇妙な言葉で表現する部分は、書ではこう訳されている:われわれはいま、それ自体を開蔵するものを用象として用立てるように人間を収拾するあの挑発しつつ呼びかけ、要求するものをこう名づける――集‐立(Ge-stell)と。この文を理解できる人は、まずいないだろう(訳者が理解しているかどうかも疑問だ)。私は原文を読んではいないが、英訳のほうがはるかにわかりやすい。英訳ではGe-stellはenframingと訳されており、自然を一定の枠組の中で理解し、利用することだ。 この論文が重要なのは、若きハイデガーが『存在と時間』で提起した形而上学批判という問題に、

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    eureka1 2009/09/23
  • バフェットの「ケータイ音痴」がリーマンを破綻させた? - 池田信夫 blog

    磯崎さんのツイッター経由で知ったが、「ウォーレン・バフェットがリーマンを破綻させた」という都市伝説は当だったようだ。彼に対するCNBCのインタビューによれば、バークレイズがリーマンを買収するには、同社の保有する「毒入り資産」についての米政府の債務保証が必要だったが、財務省は株主の同意を要求した。バークレイズの首脳は、バフェットが出資を約束すれば財務省を説得できるかもしれないと考えて、土曜(9月13日)の夜8時に彼の携帯に電話したが・・・Buffet: Oh, I got a call. I was in Edmonton at a social event. I was at the hotel at about 6:00 or so Edmonton time. [...] They described the transaction to me that I really could

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    eureka1 2009/09/21
  • Imagine - 池田信夫 blog

    著作権のない世界を想像してごらん きみにできるかな ぼくの書いた曲が、また「リマスター」されて売り出され 全世界でヒットチャートのベスト1になったって? ロックは1970年に終わったんだね 昔のレコードに何億ドルも著作権料が発生することが 「創造のインセンティブ」になるんだろうか? ポールもヨーコも「著作権を死後70年に延長しろ」といってるけど それは自分がもうクリエイターではなくなったと告白してるんだよ ぼくらが解散して40年近くたつのに いまだに著作権をめぐる紛争が絶えない テレビ番組のBGMに無断でぼくらの曲を使うと1万ドル請求される というのは業界では有名な話だ 無名時代のぼくらが著作権を音楽出版社に売っちゃったおかげで 著作権はぼくらの知らないところで転売され マイケル・ジャクソンが持っていたが 彼はぼくのところに来てしまった これを誰が相続する

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    eureka1 2009/09/14
  • 長期的関係の呪い - 池田信夫 blog

    きのうの記事の続きだが、日の自殺率がなぜこれほど高いのかというのは、かなり深刻な問題だ。それが「失われた20年」に増えたことから考えても、いま日社会が直面している変化を象徴しているように思われる(テクニカルで長文)。 基的な原因として自殺を名誉ある行為とする文化があり、経済的な苦境や高齢化による病気が増えたことも事実だろう。しかし時系列データでみても、1990年から10年ほどの間に1.5倍にも激増したのは、ただの不況や失業の問題とは思えない。興味あるのは、主要国の中で韓国の自殺率が日と並ぶ高さになり、しかも同じように90年代以降、急増していることだ。以前の記事でも書いたように、日韓国は「双子国家」であり、両国には相違点が多いが共通点も多い。似ているのは、日の系列や韓国の財閥に代表される長期的関係によるガバナンスが崩壊しつつあることだろう。 囚人のジレンマから協力が発生する

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    eureka1 2009/08/24
  • 日本をあきらめる - 池田信夫 blog

    竹森俊平氏の対談シリーズの最終回のゲストは、意外にも竹中平蔵氏。しかも彼を「日経済の恩人」と絶賛している。かつて「不況の最中に構造改革なんかやるのはバカだ」と竹中氏を(暗黙に)批判していた竹森氏が、リフレ派から構造改革派に「転向」したのはけっこうなことだが、かつての自説との矛盾の説明がいささか苦しい。 2000年代の最初の不良債権処理についての2人の意見はほぼ一致しており、当ブログや池尾・池田で書いたこととほとんど同じだ。経済危機の質は信頼の欠如にあり、それを回復することなしに財政・金融政策だけで危機を脱却することはできない。その意味で(中途半端に終わったとはいえ)竹中氏のハード・ランディング政策は正しかったのである。 ただ私が興味をもったのは、最後の「低成長でも健やかに暮らせればいい?」という問いだ。Welfareを「厚生」という変な日語に訳したのは誤訳で、これは英語では「幸

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    eureka1 2009/07/24
  • 超ガラパゴス戦略 - 池田信夫 blog

    今週のASCII.jpのコラムで紹介したが、NYタイムズまで日の携帯電話を「ガラパゴス」と呼ぶようになった。しかし夏野剛氏もアゴラ起業塾で言っていたように、日のケータイの技術は今でも世界一だ。資金も人材も十分だ。欠けているのは、それを世界に売り込む戦略を決断する経営者だけだ。 逆にいうと、経営者を入れ替えて戦略を立て直せば、ガラパゴスと馬鹿にされている技術を世界に売り込むこともできるはずだ。書は、そのためのフレームワークを提唱し、いくつかのケースを「進化論」的な枠組で分析している。日の製造業が要素技術ではすぐれていながら収益が上がらない原因は、モジュール化によって「すり合わせ」の優位性が生かせなくなったからだ、というのはおなじみの議論だが、この程度の認識もなしに「ものづくり」にこだわる経営者が多い。 問題は、どうすればこの隘路を突破できるのかということだが、そこに意味的価値とい

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    eureka1 2009/07/23
  • GMより破綻している森永卓郎氏の論理 - 池田信夫 blog

    テレビのワイドショーによく出てくる森永卓郎という「経済アナリスト」がいる。私はワイドショーは見ないのでよく知らないが、たまに当ブログに彼を批判するコメントやTBがくる。その元記事を読むと、なるほどこれはひどい。ワイドショーって、毎日こんないい加減な話を流しているのだろうか。 たとえば森永氏は、GMの破綻処理に時間がかかった原因をこう推測する:「それはCDSという支払保険がかなり設定されていたからだと考えられる。なぜなら、破綻しなくてはCDSの保険がおりないからだ」。彼はCDSのしくみも知らないらしい。CDSにはいろいろな特約があり、GMのように債務整理が行なわれる場合には、それも清算事由に該当する。GMの破綻処理が長期化した原因はそんなことではなく、債務削減交渉が難航したことだ。これ以外にも間違いが多いが、極めつけはその結論だ:日の[金融機関の]損失総額は15兆円とされ、これは全体の4

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    eureka1 2009/07/11
  • CD&DVD51で語る西洋音楽史 - 池田信夫 blog

    同じ著者の『西洋音楽史』は、日音楽雑誌にありがちな「泰西名曲」の巨匠による名演奏を絶賛する批評とは無縁の、同時代の文脈から西洋音楽を客観的に評価する名著だった。しかし音楽について言葉で語るのは、どうしても限界がある。書は、具体的なCDやDVDに即して西洋音楽の変貌を跡づけるものだ。 しかし『レコード芸術』の読者には、とても受け入れられない選曲だろう。なにしろ51曲のうち、モーツァルトが出てくるのは25曲目。それまではグレゴリオ聖歌から始まって、中世・ルネサンス・バロック音楽が半分を占める。ロマン派はごく簡単にすませて、42曲目にはシェーンベルクが登場する。私のもっているCDともほとんど一致しないが、重なるうちでおすすめできるのは次の5枚だ(一部は著者の推薦盤と違う):Josquin: Missa Pange Lingua (Tallis Scholars) Rameau: Pie

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    eureka1 2009/06/16
  • 経済学者のバイアス - 池田信夫 blog

    昔、経済学史のワークショップに出たことがある。学説の解説ばかりで退屈したので「経済学はself-interestを扱うのに、なぜ経済学者だけは私利私欲なしに真理を探究するすることになっているのか。実際には、みんな学界で出世するのが目的じゃないのか」と質問したら発表者が絶句してしまい、根岸隆氏が「おっしゃる通り経済学者もself-interestでやってるんだが、それを論じると社会学になってしまう」と助け船を出した。 昨今の経済危機について経済学者が何もいえないのも、こうしたバイアスが影響している、とSteven Levittは書いている:In my opinion, the fundamental problem is this: from a modern academic perspective, the sorts of skills that accompany having a

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    eureka1 2009/06/04
  • ハイパーインフレはブラック・スワンか - 池田信夫 blog

    WSJによれば、ナシーム・タレブが顧問をつとめるヘッジファンドUniversaが、Black Swan Protection Protocol-Inflationというファンドを立ち上げた。これはアメリカ経済がハイパーインフレになった場合にもうかるファンドだ。Universaは、リーマン破綻の前にアメリカ株を空売りして100%の利益を上げたという。 たしかに、これはギャンブルの対象としてはおもしろい。テイラーとメルツァーはpro、クルーグマンはconだ。理論的には、何かの理由で多くの投資家がインフレ期待(政府への不信)をもてばハイパーインフレが起こるが、最終的にFRBがインフレを制御できるという信任があるかぎりインフレ期待は起こらない。したがって問題は、ハイパーインフレが制御可能かどうかだ。テイラーもメルツァーも制御不可能になるおそれがあると警告しているが、今のところ市場にそういう懸念は

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    eureka1 2009/06/04
  • 地デジカ対アナロ熊 - 池田信夫 blog

    地デジのキャラクター「地デジカ」は、いろいろいじられたが、そのライバル「アナロ熊」にはテーマソングができ、3DのCGと実写を合成した「プロモーション・ビデオ」まで登場した。こんな高度なCGが、素人の遊びでできるようになったのは驚異だ。 日には連歌や俳諧など、模倣やパロディによって創作する伝統がある。それは農村のタコツボ共同体から「無縁」になった人々が、都市でヨコのつながりを作り出すシステムだった。地デジのような「お上」のメディアより、こうしたノマド的なメディアのほうが、実は日の伝統芸なの...

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    eureka1 2009/05/29
  • 「エコ」という名の産業政策 - 池田信夫 blog

    Robert Reichがオバマ政権の産業政策に警告している:America now has a full-blown industrial policy. But it's an odd one -- a combination of lemon socialism and taxpayer-financed regulation. Bailing out the auto companies while forcing them to lay off tens of thousands of their workers, imposing higher fuel-economy targets on them, and lending them billions more to meet those new targets seems oddly unrelated to the l

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    eureka1 2009/05/23
  • 今こそアーレントを読み直す - 池田信夫 blog

    著者がハンナ・アーレントについて書こうと思ったきっかけは、秋葉原事件だという。あれを「新自由主義が生み出した派遣労働者の悲劇」といった物語に仕立て、かわいそうな人々を救済する「派遣村」のような温情主義をたたえる言説が流行した。派遣村を批判した総務政務官を更迭しろ、と国会の代表質問で追及したのは民主党の鳩山由紀夫幹事長(当時)である。 アーレントは、このような「共感の政治」を批判する。彼女は『革命について』でフランス革命を否定し、アメリカ独立革命を肯定した。彼女はlibertyとfreedomとを区別し、前者をフランス革命の、後者をアメリカ独立革命の理念とした。Libertyは抑圧された状態から人間を解放した結果として実現する絶対的な自然権だが、freedomは法的に構成(constitute)される人為的な概念で、いかなる意味でも自然な権利ではない。 「人間が生まれながらに等しく人権を

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    eureka1 2009/05/20
  • ブラック・スワン - 池田信夫 blog

    コメントで教えてもらったが、翻訳の難航していた"The Black Swan"の訳が、ようやく6月に出るようだ。アマゾンで予約を受け付けている。 たぶん10年に1冊ぐらいしか出ない、世界経済危機を予告しただ。経済を破滅に追い込むのは、金融工学がヘッジしたと称しているリスクではなく、予測不可能な不確実性だ、という書の警告をアメリカの金融当局が真剣に受け止めていたら、こんなひどいことにはならなかったかもしれない。

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    eureka1 2009/05/04
  • 終身雇用という幻想を捨てよ - 池田信夫 blog

    元同僚から送ってもらったNIRAの緊急提言は、よくできている。内容はおおむね経済学者のコンセンサスだが、長期雇用だけを「正規雇用」として転職を悪とみなす労働行政を変えるべきだと明確に提言し、flexicurityの理念を掲げたことは注目に値する。 この表でもわかるように、終身雇用と呼べるような実態は従業員1000人以上の大企業の男性社員に限られており、その労働人口に占める比率は8.8%にすぎない。これは戦後ずっと変わらない事実であり、終身雇用が日の伝統だなどというのは幻想である。しかも次の図のように、この30年間で産業別の成長率は大きく差がついている。全産業で一律に雇用を守ることは不可能であり、労働市場の硬直性が労働生産性を(したがって成長率を)制約している。 図のように生産性格差が大きく開いている現状では、雇用政策は衰退産業から成長産業に労働力を移転する産業政策の役割も果たす。かつ

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    eureka1 2009/05/02