霧深い早朝の山あいで寒さに耐えながら夜明けを待つ。一帯が少しだけ明るくなると、徐々に視界が開けた。白くかすんだ雲海のすき間から、遠くの山頂に巨大な石垣が見えた。「おおーっ」。カメラを持った観光客から歓声が上がる。まさに「天空の城」だった。 兵庫県朝来(あさご)市にある竹田城跡(たけだじょうせき)は国指定史跡。別名を虎臥城(とらふすじょう)といい、そのスケールは南北400メートル、東西100メートルに及ぶ。天守台の標高353・7メートルの石垣遺構で、1400年代中盤に但馬の守護大名、山名持豊(やまなもちとよ)が築城したとされる。 1577年の竹田城の戦いでは、織田信長軍だった羽柴秀吉の弟・秀長が歴代の城主・太田垣(おおたがき)氏を破り城主になった。しかし、1600年の関ケ原の合戦後、廃城に。今では石垣だけが往時をしのばせる。 城を神秘的に包む雲海は、下を流れる円山川(まるやまがわ)から立ち昇