井上理 日経ビジネス記者 1999年慶応義塾大学総合政策学部卒業、日経BPに入社。以来、ネット革命などIT業界やゲーム業界の動向を中心に取材。日本経済新聞への出向を経て2014年4月より日経ビジネスの電機・ITグループ この著者の記事を見る
アソシエ:今回から始まる「乗り移り人生相談」。まずは、読者からの相談ではなく、当欄担当の私(日経ビジネスアソシエ副編集長・三橋英之・当時)からいろいろとお聞きしたいことが。 シマジ:何でも聞いてくれ。 アソシエ:「週刊プレイボーイ」で開高健さんの人生相談「風に訊け」の連載が始まった頃、私は高校生でした。高校生の男子が週プレを買う一番の目的は当然別のところにあったわけですが、「風に訊け」は大好きでした。開高さんの言葉は、深い森のような印象で、静謐ながら生命の濃密な匂いがすると言うか…。この人が経験してきたことや目にしてきた世界を前にすると、ちっぽけなことに悩んでいるのがバカらしくなってくるんですよね。 ただ、残念ながら柴田錬三郎さんの人生相談コーナー「キミはやれ、俺がやらせる」も、今東光さんの「極道辻説法」も、私が小学生時代の連載で、リアルタイムでは読んでいません。後年、お二人の回答が本にま
ホンダの創業者である本田宗一郎は、日本の一般的な慣習とは違った言葉を発していた。「能ある鷹は爪を出せ」「会社のためにではなく、自分のために働け」「技術論争に上下関係はない」――。これらは社会を変革しようとする力強い名言である。 今のホンダで、この名言がどこまで社員に浸透しているかは明確ではない。ただし、筆者がホンダを去る11年前では、とても浸透しているとは言えない光景をたくさん見てきた。 今回のコラムでは、人材に対する考え方と行動様式を取り上げ、日韓の違いや特徴を分析してみる。 人材育成教育は必要か否か 1年前、筆者は「人材を育てるホンダ 競わせるサムスン」という本を出版した。その表題だけだと、ホンダの人材育成プランは優れているのではないか、と思われる方も多いだろう。 筆者があえてこのような表題にした背景には、現実は真逆であることを風刺したことがある。すなわち、しっかりした人材育成プランな
北方領土で日本人労働者を発見――――。 日本人の入域が厳しく制限されている北方領土・択捉島の内岡(なよか)で7月4日、日本人が無許可で上陸しているのを「ビザなし交流団員」として同島を訪れていた日経ビジネスの記者が目撃した。 この60代男性は本誌の直撃取材に「何度も北方領土に上陸している。(入域するな)という外務省からの通達が来ているが無視している」と答えた。男性はロシアの水産会社に雇われ、北方領土水域で、はえ縄漁に関わっていると見られる。 外務省は日本人がパスポートを所持し、ロシアビザを取得して北方四島に入域することを禁じている。これはロシアの管轄権を認めることになるからだ。 だが、これまで「日本人が無許可で上陸している」との未確認情報は存在していた。しかし、現地には日本人は誰ひとりとして住んでおらず、上陸行為を確認することはできなかった。近年、現地で日本人に接触するのは、日経ビジネスが初
これは、韓国のサムスン電子がアップロードした、トラックのビデオだ。サムスン製品を世界各地で運ぶ、輸送トラックだ。 この動画でサムスンは、「SAFETY TRUCK」の取り組みを紹介している。普通、トラックで「SAFETY」というと、自動ブレーキシステムや速度調整機能が搭載されているとか、エアバッグやGPS、アルコール検知システム、あるいはドライブレコーダーなどを搭載しているとか、そういうものが思い浮かぶ。しかし、このサムスンのアプローチは非常に独創的で、トラックの周囲を走るドライバーたちを「SAFETY」にするものだ。 具体的には、何とトラックの背後にディスプレーを搭載し、デカデカと画像を表示させるものだ。トラックの前方にはワイヤレスカメラを設置。トラックから見える前方動画を、リアルタイムで後方に流す仕組みだ。 トラックの背後には4枚のディスプレーを搭載している。ご丁寧にも夜間モードも設定
遙から 人はいつもやっていることしかできない、と、私はよく人に言っていた。日々家事に翻弄される主婦に突然お化粧をと言ってもちょっとチグハグになったりするが、そのかわり料理は抜群だ。そして、ビジュアルを整えるのが日課の女性に突然手料理をと言ってもイマイチな料理になるのは仕方のないところ。日頃やっていることしかできないわけだが、日頃やっておればできる、とも置き換えられる。 限界の言葉であると同時に可能性の言葉だ。だが、私は身をもって“限界”を仕事で感じるハメになった。 昨今話題になる不倫市議ネタについて、パネラーたちの議論を仕切る役割のシーンだった。パネラー役が日常の私が、議論の中心に立つ機会がきた。いつもやっていないことをやることになった。 結論から言う。 …失敗した。 いつもの反論で応じたところ… パネラーには手練れのタレントたちが並ぶ。政治から芸能ネタまでどの分野でも喋れるベテランたちだ
「どうせコスト削減のための手法でしょ? 自分たちにとって何のメリットもない」 カイゼンと聞いて、そう思う方が大半なのではないだろうか。 確かにカイゼンを主導する経営者の多くがコスト削減を狙っていることは間違いない。ただ、「自分たちに何のメリットもない」と決め付けるのは早計だと思う。カイゼンは何より、個人の仕事がしやすくなってはじめて組織としての成果が現れる。コスト削減は、その後に付いてくる「副産物」に過ぎないのだ。 日経ビジネス2015年6月29日号の特集「今どきカイゼン100」では、そんなカイゼンの実例を取り上げた。障害者が中心となって考案したカイゼンが実は、障害者だけでなく全ての人にとって有用だった組立工場の事例。パートの女性たちの「主婦の目線」で考案したカイゼンが、男性社員を刺激して数々の独創的なカイゼングッズを生み出したケーキ工場の事例。 大事なのは「働きやすさ」 製造業だけではな
飛び道具という言葉があります。営業の世界においては、チラシやDM(ダイレクトメール)、メルマガやブログなどを指します。 飛び道具はきちんと使えばそれなりに有効ですが、あくまでも営業行為を補完するものであり、過度の期待は禁物です。 ところが本気で営業をしていない人に限って、追い込まれると安易に飛び道具に頼ろうとします。次の会話文を読んでみてください。 ○営業課長:「部長、どうしても企画部にお願いしたいことがあります」 ●営業企画部長:「なんだ」 ○営業課長:「実は7月の大型イベントの集客がうまくいっていないのです」 ●営業企画部長:「知っている。400名が集客目標だったが、300名に下方修正したらしいな」 ○営業課長:「そうなのです。しかし今日までで90名ぐらいしか集まっていません」 ●営業企画部長:「なんだって、開催まで1カ月もないだろう」 ○営業課長:「イベントの準備に予算を結構使いまし
遙から 前回に引き続く話になるが、甲子園で始球式を体験してきた。今までメディアの立場で球場内に入ったことはあるが、ほかならぬ自分がマウンドに立つために、ユニフォームを着てそこに居るとなると、途端に風景が変わって見えた。 想像と、やってみるとでは天と地ほどの違いがあった。この経験で遭遇した数々の新たな発見について今回は書いてみたい。 私、においます? まず「甲子園で始球式に出してもらえる」と公表するだけで、おっそろしい数の男性たちが「教えてあげる」と近づいてきた。 ムゲにできない理由はそれが善意であるからだ。でも私はすでに元阪神タイガースのプロの投手にピッチングのコーチをお願いしている。それも全員承知している。でもやってくるのだ。それこそもう、好みのにおいに誘われたハエたちが一斉に集まってくるように「俺が教えてあげる!」と。 私を女だからと舐めているのか、元プロ投手のコーチの存在を舐めている
創業240年以上の歴史を持つ、社員7人の家族企業、白糸酒造が、サンライズ制作のアニメーション「装甲騎兵ボトムズ」とのコラボを皮切りに、アニメ関連の商品で業績を急回復させている。2013年から開始したアニメ関連部門はすでに売上高の2割を超えるまでになった(2014年の同社の年商は4500万円)。その代表的な商品が、ボトムズの監督、高橋良輔さんが題字を書いた日本酒「最低野郎(ボトムズと読む)」だ。 仕掛けたのは同社取締役の宮﨑美帆さん。ファン故の岩をも貫く熱意の賜物、といえばその通り、そういう話ではあるけれど、アニメへのひたむきな気持ちが、実際のビジネスにつながっていく過程が面白い。 小学校から男の子っぽいアニメにはまり、大学にお勤めの傍ら、声優学校、製作プロダクションの下請け、と、25歳まで大阪で大暴れしていた宮﨑さんだが、ついに親元に呼び戻される日が来た! ※宮﨑さんの「﨑」の字は、サブタ
なでしこJAPANを応援していると言うと、意外な顔をされる。 「あれ? 愛国者でしたっけ?」 そういう話をしているのではない。 なでしこのゲームは、きちんと追いかけて、真剣に観戦すれば大変にエキサイティングなのだということを私は言っている。各選手の利き足と得意なプレーを把握して、展開を予想しながら見れば、さらに興味深く応援することができる。 と、私が口を酸っぱくしてかきくどいても、ネット上に蟠踞するサッカーオタクは冷たい言葉を返してくる。 「女子のゲームは、とにかくスピードとパワーが無いから見てらんない」 「だって、男子高校生のトップクラスとどっちこっちの実力なわけでしょ?」 そういう問題ではないのだよ。 サッカーファンの中には、レベルの高いゲームを見ている観客がレベルの高いファンで、水準の低いリーグの低レベルなサッカーを見ているサッカーファンはダメなサッカーファンであるとする、度し難いラ
環境省が音頭を取って2005年から始まった「クールビズ」は今年で10年目を迎えました。ノーネクタイ、ノージャケットという服装は多くの会社員に受け入れられました。 ところで営業の人たちはクールビズをどう受け止めたらよいのでしょうか。意外と多くの営業が今でも悩んでいる事柄です。以下の問答を読んで「営業のクールビズ」について考えてみましょう。 ○部下:「課長、凄い勢いで仕事をとってきていますね。今年も全社でダントツのナンバーワン、間違いなしですね」 ●営業課長:「1位と言われてもなあ。社内で競争しているつもりはないし」 ○部下:「なるほど、ライバル他社の営業と比較しているわけですか」 ●営業課長:「いや、誰とも比べていない。自分だよ。過去の自分としか比べない」 ○部下:「凄いですね……。憧れます。自分しか敵がいないって、なんだか大相撲の白鵬関みたいですね」 ●営業課長:「あそこまではとても。ただ
「目標予算は100%、あるいはそれ以上達成させるべき。99%ではダメ」。 私はこう断言し、「絶対達成」という言葉を使って、営業のコンサルティングをしています。反発もあります。セミナーや研修で絶対達成の話をすると、次のように反論してくるマネジャーが必ずいます。 「そんなことを言っても、今の時代、あんまり無理をさせると『パワハラ』と言われてしまいます」 「追いつめ過ぎて万が一、うつ病になってしまったら困ります」 いずれも過敏に反応し過ぎです。「目標を必ず達成する」という当たり前の話から、なぜ突然、パワハラやうつ病の話に飛ぶのでしょう。 管理職としてパワハラは厳禁ですし、部下の健康に注意すべきです。しかし、それは神経質になることとは違います。 なぜ過敏になってしまうのか。それが今回のテーマです。次の会話文を読んでみてください。 ●社長:「もう6月か。1月から入社した若い子が10人いたがどうかね。
遙から 夢は口に出して言い続けているといつか叶う、と、どこかで聞いたことがある。過去にも「本当だ」と感じたことはあった。言い続けているとそれをたまたま耳にしたどこかのいい人がひょこっと叶えてくれたりすることが実際あるのだ。 今回もそうだった。本当にあった話だから聞いてほしい。 羨ましく、妬ましい 「私は過去、阪神タイガースの番組を15年間もやってきた。なのになぜ私に始球式の機会がなかったのか。始球式に呼ばれる他のタレントが羨ましく、妬ましい」とテレビで喋った。その嘆きをたまたまテレビで聞きつけてくれたのが、なんと、阪神タイガース球団の"誰か"だった。 私がそれを嘆いた番組はバラエティ番組で、"制作部"という部署が作っている。球団の"誰か"が、"スポーツ部"の"誰か"にこう言ってくれたそうだ。 「始球式に出してやったらいいじゃないか」 そのひと言が、スポーツ部から制作部に降りてきて、私の耳に
大きな「市」の廃止をめぐる住民投票としては、ベルリン市(都市州)と周辺州の合併を問う事例(1996年、否決)と並ぶギネス級の投票が迫る中、行政学、地方自治論の視点から、しかし批判的に、大阪都の内容と進め方について論じる。 1.東京からは見えない大阪都問題 最初に指摘しておきたいのだが、不思議なことに、橋下徹市長以外の維新の党の政治家は、テレビなどの討論会に出席しない。(4月30日の弁護士会シンポジウムは、維新側が直前にキャンセルし中止になった)。つまり、ほとんど橋下氏の弁舌だけが、大阪都構想を支えている。 書店に並ぶ本は、大阪都反対が圧倒的に多い。5月5日、大阪での学者による記者会見には、批判意見を持つ106人が名前を連ねた。橋下市長などが職員に発言を禁止し、批判する記者や学者を「個人攻撃」する中ですら、反対意見が続々登場していることは、注目できる。 東京では分からない大阪の事情とは 賛成
晴天続きの連休真っ只中、いや~な現実を思い出させる見出しがネット上に踊っていた。 「働かない正社員を解雇できる社会にしたい――」 おや、まあ、なんとも……。働くオジさん(オバさんも)であれば、「ナニ??」とついクリックしたくなる“引き”の強さ。 しかも、その発言をしたのが、元オリックス会長の宮内義彦氏(現シニア・チェアマン)と知れば、余計気になる。かくいう私もその1人だった。 実はこれ。ジャーナリストの田原総一朗さんと宮内さんとの対談記事で、かつて小泉内閣時代は規制改革会議の議長を務め、抵抗勢力と激しくやり合った宮内氏が、アベノミクスの第3の矢の問題点を指摘する中で飛び出した発言だったのである。(以下、抜粋) 宮内氏:「本来の第3の矢である、医療、介護、教育、農業、雇用制度などの構造改革、規制改革ができていないのは、既得権益が大き過ぎることが問題」 田原氏:「雇用問題でいうと、既得権益を持
野村浩子 ジャーナリスト・淑徳大学教授 日経ホーム出版社(現日経BP社)で「日経WOMAN」編集長、女性リーダー向け雑誌「日経EW」編集長などを歴任。日本経済新聞社・編集委員などを経て、2014年4月から、淑徳大学人文学部表現学科長・教授。財政制度等審議会委員など政府審議会委員も務める。 この著者の記事を見る
「博多ラーメンとは何か」を語れるか 福岡に本社を置く豚骨ラーメンチェーンの博多一幸舎は『アジアで働く いまはその時だ』に掲載された後もアジアに店舗を増やしている。現在は東京にも出店して国内が11店舗、海外はシンガポールの2店舗を含め、24店舗となった。そして前回、紹介した吉岡大輔との出会いをきっかけに、ヨーロッパ進出も目論んでいる。 同チェーンの特色はいずれも直営で、FC店がないこと。店を増やすには、人材を集めて教育するしかない。同社代表の入沢元、インドネシアおよび中国の北京、上海地区を統括する大石昌明両氏に、海外で仕事をする際の問題点について聞いた。今回の話題は主に中国だが、博多発シンガポール経由の番外編としてお届けしたい。 いまの出店状況はどうなっていますか。 入沢:国内は2014年末に東京に出しました。海外はオーストラリアのメルボルン、そして中国は北京です。現在、計画中なのがフィリピ
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