「バルザックは不幸なことに、サント=ブーヴのような批評家にも、そしていわゆる「講壇批評家」、つまり文学史を書く教授連にも気に入られていなかった。もし彼らの言うところを信じるならば、バルザックはその小説を誇張したお談義によって台無しにしてしまった(彼はおしゃべりだった)。バルザックの心理学は不十分であった(しかし体は大きかった)。彼には精神的な繊細さが欠けていた(加えて大食らいだった)。自然に対する共感というものがまったくなかった(けれどお金は大好きだった)。彼は鈍重な俗物的な天才であった(いつも借金取りに追われていた)。最もまずいことには、彼には文体がなかった(それでひどい誤りがたくさん生じた)。しかし、人々はその間違いにけちをつけてしまったあとでは、それを大目に見ることにし、彼の長所さえ認めたのだ」 「文学論」といえば、「けっ!」とはき捨てるように言われるのが、この国に習いだ。昔の本を読
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