2006年12月20日21:00 カテゴリ書評/画評/品評 書評 - 「負けるが勝ち」の生き残り戦略 危うく見落とす所だったが、これは面白い。 「負けるが勝ち」の生き残り戦略 泰中啓一 「年末年始に一冊新書でも読んでみるか」という人は、是非本書を忘れないようにしていただきたい。 本書「『負けるが勝ち』の生き残り戦略」は、副題の「なぜ自分のことばかり考えるやつは滅びるのか」ということを、実験科学的、すなわちシミュレーションにより考察した本である。 目次 プロローグ 情けは人のためならず 第1章 スキャンダル候補が選挙で生き残る 第2章 じゃんけんゲーム 第3章 進化とは最適化のプロセス―自然選択ということ 第4章 「負けるが勝ち」の進化論 第5章 近親婚を避ける生物界のシステム 第6章 なぜ男の子の出生率が高いのか エピローグ 汝の欲せざるところを他人に施すなかれ 本書の最大の美点は、ページ
「ターミネーター」観たことある? 最初の奴だ、シュワちゃんが悪玉の奴。あのターミネーターの『視界』を覚えてる? 赤外線カメラの映像をベースに、重要物はロックオンされ、ナレーションが文字列で表示される。あのシュワちゃんビジョンを『読む』ような錯覚にとらわれた── そんな独特な文体。 結論── とことん堪能した。前作の「マルドゥック・スクランブル」同等、スゴ本なり。ギブスンを意識したサイバーパンクアニメを『読む』ようなカンジ。人によると、「攻殻機動隊」や「マトリックス」を思い出すかも。わたしの場合、洗練されていない主人公の泥臭い動き方と、表紙絵がどう見てもシュワちゃんなので、「ターミネーター」(T1のやつ)のイメージがついてまわってしょうがなかった。 この手のストーリーやキャラは散々アニメで"消費"したくせに、小説というカタチで読まされると、ものすごく新鮮に見える。たとえば、バトルシーンはこん
白川静先生が10月30日に亡くなった。 享年96歳。 白川先生の漢字学三部作『字統』、『字訓』、『字通』はそれぞれ先生が74歳、77歳、86歳のときに完成した。 私ごときが五十路をいささか過ぎたあたりで、「もうおおかたの仕事は終えたし、余生は雑文を草して、世間のお邪魔にならないように生きたい」などと口走るのは「100万年早い」ということを痛切に感じさせる偉大な業績である。 『字通』を私はつねに書き物机の上に置いてある。 漢字の原義(に限らず、なにごとにおいても「起源のようす」)について知りたくなるのは子どものころからの私の癖である。 この幼児的で法外な好奇心をつねに満たしてくれる思想家として私が名を挙げることができるのは、マルクス、フロイト、レヴィ=ストロース、そして白川静の四方である。 この四人の共通点は、「人間の諸制度はそもそもどういうところから始まったのか?」という起源にかかわる問い
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