1998 年 12 月 10 日。ぼくはバングラデシュのダッカのホテルでこれを書いている。ちょうど昼過ぎのイスラームのお祈りの時間。近くのモスクから、クルアーンの朗唱が聞こえてくる。窓から見下ろすと、そこにはリキシャにオートリキシャ、そして車と人の大洪水。車はのべつまくなしにクラクションを鳴らして、整備の悪いエンジンがすさまじい音をたてている。 ちょっと外に出てみよう。そこでは2ストエンジンの排気が視界をさえぎるほどの濃さで、ちょっと空き地があれば、そこには竹編みの壁と板でつくったバラックが建ち並び、排泄物のにおいがたちこめ、牛とヤギとニワトリと、皮膚病の犬と、栄養状態の悪そうな男たちに女たち、そしてそこらじゅう子供、子供、子供だらけ。その子供がさらに赤ん坊をかついでいたりする。線路づたいにうろついてみると、並んだバラックからそういうガキが出てきてたかってくるので、2、3 発けとばして追い