照りつける太陽にあぶられた岩肌。おどおどした様子で移動していたトカゲが、何者かに狙われている気配を感じたのか、ぴたりと動きを止めた。辺りはひっそりと静まりかえり、鋭くとがった針のような岩山が、空に向かって無数にそびえている。次の瞬間、眼下の谷からオウムが甲高い鳴き声をたてながら飛んできて静寂を破った。 トカゲがすっと動いた。爬虫類(はちゅうるい)学者のヘリー・ラコトンドラボニーは腕を伸ばすと、あっという間にそのトカゲを捕まえた。そして握った指を少し開き、手の中の獲物を見つめて言った。 「新種のトカゲでしょう」 マダガスカル島西部のツィンギ・デ・ベマラ国立公園・厳正自然保護区に滞在した数日の間に、ラコトンドラボニーは2、3度、同じような発見をしていた。マダガスカルは、生息する生物の90%がほかの土地では見られない固有種という、生物多様性で知られる島だ。なかでも、1990年に世界遺産に登録され