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ブックマーク / honz.jp (66)

  • ポートフォリオはあなた次第『じぶん時間を生きる』 - HONZ

    書店でを選ぶとき、まずオビに目がいくという人も多いだろう。書を手にしたとき、私の目に最初に飛び込んできたのは「資主義から自由になる生き方考」というフレーズだった。同じような内容のを、これまで山ほど読んできた。棚に戻そうとした次の刹那、ひっかかる言葉が目に飛び込んできた。 「効率化するほど時間に追われるのはなぜ?」 その時私は、これと同じ問題意識を抱えて転職した直後だった。SNSSlack、zoomなど便利なツールを導入して効率化してきたはずなのに、時間的な余裕が失われていくのは何故だろうか。公私の境が曖昧になり、休む間もないモグラたたきのような消耗戦を強いられている気がしていた。 脱出を試みながらも、私はまだ具体的な課題設定ができていなかったのだと思う。書を読み始めたら、ページを繰る手が止まらなくなった。まるで砂漠に水が沁み込んでいくように、活字が浮かび上がり頭に飛び込んできた

    ポートフォリオはあなた次第『じぶん時間を生きる』 - HONZ
    fumikony
    fumikony 2023/09/20
  • 『自衛隊の闇組織』「別班」は実在する! - HONZ

    TBSのドラマ『VIVANT』が話題だ。我が家もドはまりしていて家族は毎週考察に夢中である。主人公の乃木憂助は自衛隊の裏の組織「別班」の工作員だったが、その後テロ組織の一員となった。「潜入」なのか「転向」なのかはいまのところ不明だが、予測を裏切る脚が売りなので、この先もあっと驚く展開が用意されているのかもしれない。 さて、設定が自衛隊の秘密部隊ともなると、当然のことながら家族からこんな疑問の声があがる。 「“別班”って当にあるの?」 「あるよ」即答したら、「え―――っ!?」と大興奮。そこで別班の成り立ちや任務、公安との違いなどを解説してやると、子供たちは珍しく尊敬の眼差しである。それだけではない。日頃、掃除機での山を突き崩す嫌がらせを繰り返すまでもが感心しているではないか。ひさびさに父親の面目を保てた気分だが、実は解説のほとんどが書の受け売りだというのは秘密である。もっともドラマ

    『自衛隊の闇組織』「別班」は実在する! - HONZ
  • 数多の「健康で、長生きする」実践的なメソッドが全部まとまった一冊──『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』 - HONZ

    数多の「健康で、長生きする」実践的なメソッドが全部まとまった一冊──『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』 近年、栄養環境の改善や医療技術の進歩によって人間はより長く生きることができるようになった。ただ、ほとんどの人が望んでいるのは、「長く生きる」ことだけでなく、同時に「健康で」あることだろう。糖尿病などの慢性疾患を発病して、永続的な治療が必要ないのであれば、それが幸いである。 そうした状況と科学の進展も合わさってか、『LIFESPAN: 老いなき世界』など、近年「健康に、長生きする」ことにフォーカスしたが多数出るようになった。書『100歳まで健康に生きるための25のメソッド』は、そうした数多ある健康長寿のメソッドを、詳細な科学的エビデンスと共にすべてまとめ、それを実践するために何をしたらいいのかのレクチャーまでしてくれる、実践的な「健康に、長生き

    数多の「健康で、長生きする」実践的なメソッドが全部まとまった一冊──『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』 - HONZ
  • うつ病やアルツハイマー病もそれと関係しているのか 『脳のなかの天使と刺客──心の健康を支配する免疫細胞』 - HONZ

    それは脳のなかの「天使」でありながら、ときには「刺客」へと変貌するという。書の主人公は、非神経細胞のひとつである「ミクログリア」である。 つい最近まで、ミクログリアは脳のなかの端役にすぎないと考えられていた。脳内の情報伝達を担うニューロンや、そのつなぎ役を務めるシナプスといった綺羅星たちと比べると、それが果たす役割はごく些末なものだと考えられていたのである。ところが近年、そうした見方は大きく変わりつつある。ミクログリアは脳のなかできわめて重要な役割を果たすとともに、それが誤作動を起こすと、わたしたちの健康に甚大な被害が生じることがわかってきたのだ。後者の例を言えば、うつ病や不安障害、あるいはアルツハイマー病なども、ミクログリアの誤作動と関係しているという。 書は、ミクログリアが脚光を浴びるに至った経緯と現状を物語るものである。そしてそのストーリーは、ふたつの糸が撚り合わさった形で進行す

    うつ病やアルツハイマー病もそれと関係しているのか 『脳のなかの天使と刺客──心の健康を支配する免疫細胞』 - HONZ
  • 『朝日新聞政治部』未来をつかみそこねた新聞社の話 - HONZ

    スタジオジブリが出している『熱風』という小冊子に、ジャーナリストの青木理さんが聞き手をつとめる「日人と戦後70年」という連載がある。ここに2021年8月号と9月号にわたり著者との対談が掲載された。 一読して驚いた。朝日新聞が生き残りをかけて調査報道を新たな看板に据えようとしていたこと、そのチャレンジが経営陣によって潰されたことが、生々しく語られていたからだ。 海外では調査報道に活路を見出した新聞社の例もある。朝日の狙いは間違っていなかったはずだ。にもかかわらずせっかくのチャンスを自らの手で潰したとはどういうことか。もっと詳しく知りたいと思っていた。 その経緯を詳らかにした一冊がついに出版された。しかも当事者の著者自身によるノンフィクションである。優秀な記者が関係者はすべて実名で朝日新聞の内幕を明かしているのだ。これほど迫力ある内部告発があるだろうか。大新聞中枢の権力闘争、政権与党からの攻

    『朝日新聞政治部』未来をつかみそこねた新聞社の話 - HONZ
  • 『政治学者、PTA会長になる』これぞ街場の民主主義!政治学者が世間の現実と向き合った1000日の記録 - HONZ

    「その悩み、○○学ではすでに解決しています」みたいなタイトルのを見かけることがある。あなたが日々の仕事で直面する悩みや課題は、すでに最新の学説や理論で解決済みですよ、というわけだ。 だが当にそうだろうか。最新の学説や理論を応用すれば、世の中の問題はたちどころに解決するものだろうか。 著者は政治学を専門とする大学教授である。「話すも涙、聞くも大笑いの人生の諸々の事情」があって、47歳にして人の親となった。小学校のママ友やパパ友のほとんどは干支一回り以上年下だ。そんなママ友からある日「相談があります」と呼び出され、いきなりこんなお願いをされた。 「来年、PTA会長になってくれませんか?」 まさに青天の霹靂だ。驚いた著者は必死に出来ない理由を並べ立てる。「フルタイム・ワーカー」だから無理!「理屈っぽくて、短気で、いたずらにデカいジジイ」だから無理!ところがママ友は決してあきらめず、最後は情に

    『政治学者、PTA会長になる』これぞ街場の民主主義!政治学者が世間の現実と向き合った1000日の記録 - HONZ
    fumikony
    fumikony 2022/05/24
  • 『最悪の予感』穴だらけのスライスチーズ - HONZ

    作者:マイケル・ルイス ,Michael Lewis 出版社:早川書房 発売日:2021-07-08 世界最大の「コロナ敗戦国」になったアメリカ。新型コロナウイルスの感染者数は3440万人。死亡者数は61万人を超えた。これは第一次世界大戦と第二次世界大戦、そしてベトナム戦争で亡くなった死者の合計よりも多い。CDC(疾病予防管理センター)やトランプ前大統領が楽観的だったこともあり、初期対応がまずかったのは間違いない。しかしアメリカは新型コロナウイルスに対して無策だったのか?実はそうではなかったのだ。 アメリカで感染者が出始めた頃に、パンデミックを予期し、対策を立案して、コロナ禍を戦った知られざる英雄たちがいた。そんな彼らの活躍と、アメリカのコロナ対応の失敗を描いた物語が『最悪の予感 パンデミックとの戦い』だ。著者は『マネー・ボール』や『世紀の空売り』など、数々の傑作ノンフィクションを生み出し

    『最悪の予感』穴だらけのスライスチーズ - HONZ
  • 『LIMITLESS 超加速学習』学習を始める前に無用な考えを徹底的に排除する - HONZ

    勉強法や学習術はベストセラーの定番である。世界が劇的に変化する中、仕事に未知の要素が激増することに危機感を抱くビジネスパーソンは少なくない。ここで余裕を持って取り組むには、新たな分野の効率的な学習は避けられない。書の「LIMITLESS=リミットレス」とは、自分の能力と可能性に限界を設けず「ラクに」学習できる状態を言う。 そもそも制約や限界を感じるのは単なる「思い込み」に過ぎない、と著者は説く。つまり、過去に属する出自や学歴が今の人生を邪魔していると思っているだけなのだ。一方、もともと誰にも備わる「潜在能力」にちょっと点火すれば、人は信じられないほどの仕事を成し遂げられる。この能力を解き放つメソッドが、サブタイトルの「超加速学習」メソッドである。 著者は脳を最適化し記憶力を増す研究で知られる第一人者で、自己啓発に関するリアル講演とオンライン学習の世界的トップランナーでもある。書は4つの

    『LIMITLESS 超加速学習』学習を始める前に無用な考えを徹底的に排除する - HONZ
  • 『保身 積水ハウス、クーデターの深層』変われないこの国を描く骨太の経済ルポ - HONZ

    読み終えた途端、深いため息が出た。かつて「全員悪人」というキャッチコピーの映画があったが、さしずめ書は「登場人物、全員小物」といったところだ。だが、小物ばかり出てくるのにページをめくる手が止まらない。それはこの小物が私の中にも棲んでいるからかもしれない。このにはまぎれもなく私たちの姿が描かれている。 そのクーデターが起きたのは、2018年1月24日のことだった。住宅メーカーのリーディングカンパニー積水ハウスの取締役会で、会長職にあった和田勇が、社長の阿部俊則が提出した動議によって事実上の解任に追い込まれたのだ。 これは実に奇妙なクーデターだった。取締役会に先立つ2017年6月、積水ハウスは地面師詐欺に遭い、55億5900万円を騙し取られていた。事件をきっかけに立ち上げられた調査対策委員会は、経緯をつぶさに検証した結果、来「騙されるはずがなかった事件」だとして、社長の阿部に経営上の重い

    『保身 積水ハウス、クーデターの深層』変われないこの国を描く骨太の経済ルポ - HONZ
  • 『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ

    同性愛の「治療」を受ける男。娼婦を相手に性的興奮を得ることができれば成功だ。男の頭には電極が差し込まれており、後頭部から4のコードが隣の部屋まで延びている。その部屋では、研究者たちが電極から送られてくる計測値を見ながら、男の快楽中枢に適切な電気刺激を与える。 まるでSFだ。しかし、未来の話としてはおかしいと思われないだろうか。現在の状況を考えると、LGBTが治療対象となる未来などやってくるはずがなかろう。未来物語でもなければ架空のストーリーでもない。米国で実際におこなわれた人体実験なのである。 書『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』の冒頭シーンがこれだ。いったいどんな内容のなのか。意識せずとも期待感が広がっていく。まるで脳のどこかに電気刺激が与えられたかのように。 この実験をおこなったのは、精神科医ロバート・ガルブレイス・ヒース。統合失調症病などさまざまな精神疾患に対して、患者

    『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ
  • 『自閉症は津軽弁を話さない』文庫版著者あとがき - HONZ

    の何気ない「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ」というひとことに、私は10年ものあいだ「当に?」「どうして、なぜ?」と問い続けました。そして同時に湧き上がった疑問。 「なぜ、他の人は目の前にあることを不思議に思わないでいるのだろう」 この研究を通して出会った保護者や支援者の多くは、この現象について「どうしてだろう?」と疑問に思ってくれました。ところが、専門家にとっては〝地域での臨床経験があればあたりまえ〞のことだったりして、研究者には〝どの理論で説明できるか〞ということがひっかかったようでした。この現象を多くの人が知っていたのに、なぜ不思議だと思わず、今まで誰もそのメカニズムを解明しようと考えなかったのでしょう。 研究者や専門家といわれる人々(私もですが)は、自分の専門や関連領域について多くの知識をもっています。私も大学に勤めていた時は教育相談にこられたお母さんに「それはASDの

    『自閉症は津軽弁を話さない』文庫版著者あとがき - HONZ
  • 『LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界』人類の生命観と人生観を覆す新たな啓蒙書 - HONZ

    作者:デビッド・A・シンクレア ,マシュー・D・ラプラント 出版社:東洋経済新報社 発売日:2020-09-16 書は、米ハーバード大学医学大学院教授で長寿と加齢研究の世界的権威であるデビッド・A・シンクレアらによる、われわれの生命観と人生観を覆す、まったく新しい生命科学書である。 書の要旨は、「老化は自然の摂理ではなく病気で、治療によって治すべきだし、実際に治すことができる」というものだ。もちろん、2000年前に秦の始皇帝が不老不死の薬を求めたような怪しげな話ではなく、老化のメカニズムの解明という最新の研究成果を踏まえたものである。 その科学的根拠となるのが、長寿遺伝子のひとつ「サーチュイン遺伝子」だ。この遺伝子を活性化させる化学物質の研究を行っていた著者らは、遺伝子の修復機能にNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が重要な役割を果たしており、この物質の前駆体(生化学反応にお

    『LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界』人類の生命観と人生観を覆す新たな啓蒙書 - HONZ
  • 『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる - HONZ

    待ちに待った邦訳がようやく出た。 デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』である。 「ブルシット・ジョブ」とは、「クソどうでもいい仕事」のことだ。 もう少し丁寧に説明すると、「なんのためにあるのかわからない、なくなっても誰も困らない仕事」のことである。 近年、私たちの身の回りでブルシット・ジョブが増えている。 そして、確実にこの手の仕事は、働く人々の心身を蝕んでいる。 多くの人がこのことにうっすら気づいていたようで、2013年に著者があるウェブマガジンで「ブルシット・ジョブ現象について」という小論を発表したところ、国際的な反響を呼んだ。書はこの小論をベースに、その後の調査や考察を加えて一冊にまとめたものだ。コロナ禍でエッセンシャル・ワーカーに注目が集まる中、時宜にかなった出版といえる。まさにいま読むべき旬の一冊だ。 著者のデヴィッド・グレーバーは、イギリスの名門大学、ロンドンスクー

    『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる - HONZ
    fumikony
    fumikony 2020/08/26
  • 『「役に立たない」科学が役に立つ』 - HONZ

    作者:エイブラハム・フレクスナー ,ロベルト・ダイクラーフ 出版社:東京大学出版会 発売日:2020-07-29 このたび東京大学出版会から刊行された、エイブラハム・フレクスナーとロベルト・ダイクラーフ著『「役に立たない」科学が役に立つ』を読み、期待していた以上に深く考えさせられ、また心を動かされました。 著者の二人は、プリンストン高等研究所を可能にした初代所長(フレクスナー)と、現所長(ダイクラーフ)です。 初代所長であるフレクスナーは、なにしろアインシュタインやフォン・ノイマンをはじめ、綺羅星のような科学者たちの居場所であった高等研究所が創設されるにあたって決定的に重要な役割を果たした人物なので、わたしのように長年ポピュラー・サイエンス系の翻訳をやっている人間にとってはある種の有名人です。その彼の有名なエッセイが日語で読めるようになるというので、刊行を心待ちにしておりました。 フレク

    『「役に立たない」科学が役に立つ』 - HONZ
  • VRの父と呼ばれるジャロン・ラニアーによる、激動の半生とVRについて──『万物創生をはじめよう──私的VR事始』 - HONZ

    VRの父と呼ばれるジャロン・ラニアーによる、激動の半生とVRについて──『万物創生をはじめよう──私的VR事始』 この『万物創生をはじめよう』は、最初期のVR技術の探求、起業者であり、VRの父と呼ばれる(バーチャルリアリティという言葉の発案者でもある)ジャロン・ラニアーによる自伝的な一冊である。幼少期からはじまり、VRとは何なのか、どこを目指すことが可能なのかというVRそれ自体への問をはさみながら、彼が設立したVR系企業VPLリサーチを去る92年までが描かれていく。 ジャロン・ラニアーは1960年生まれで、まさにインターネットの草創期、そしてシリコンバレーが盛り上がっていく渦中に働き盛りの若者としてその現場にいた人間である。のちのインターネットの巨人たちがガレージで作業に勤しんでいる間、彼もまたVR技術を発展させようと実験・研究を続けていた。そうした草創期の混乱、そしてまだまだ技術としては

    VRの父と呼ばれるジャロン・ラニアーによる、激動の半生とVRについて──『万物創生をはじめよう──私的VR事始』 - HONZ
    fumikony
    fumikony 2020/06/25
  • 『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』日本型雇用慣行は、なぜこれほどまでに変わらないのか - HONZ

    いったんでき上がった社会の仕組みは、社会のコンセンサスがなければ決して変わらない。 そして、その前提となるのは透明性と公開性であり、これがない改革は必ずつまずく。 こうした仮説のもと、雇用、教育、社会保障、地域社会、政治、さらには日人の「生き方」までを規定している「慣習の束」がどのようにでき上がってきたのかを、歴史的事実と豊富な参考文献に基づいて丹念に解き明かしているのが書である。 とくに今、日型雇用慣行(女性と外国人に対する閉鎖性、正規と非正規との格差、転職のしにくさ、高度人材獲得の困難さ、長時間労働と生産性の低さ、ワークライフバランスの悪さなど)に対する閉塞感が蔓延しており、働き方改革が叫ばれているにもかかわらず、なかなか社会は変われない。なぜなら、今の雇用慣行は経営の裁量を抑えるルールとして、労働者側が歴史的に達成してきたものだからである。 日では、職務の明確化や人事の透明化

    『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』日本型雇用慣行は、なぜこれほどまでに変わらないのか - HONZ
  • 『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ

    スティーブ・ジョブズは自分の子供たちにiPadを使わせていなかった――彼はその影響力をもって世界中に自社のテクノロジーを広める一方で、プライベートでは極端なほどテクノロジーを避ける生活をしていた。デジタルデバイスの危険性を知っていたから。彼だけでなく、IT業界の大物の多くが似たようなルールを守っている。まるで自分の商売道具でハイにならぬよう立ち回る薬物売人みたいではないか……。 そんなツッコミで幕を開ける書は、フェイスブックやツイッター、インスタグラム、ソーシャルゲームといったデジタルテクノロジーが持つ薬物のような依存性をわかりやすく噛み砕いて分析した一冊である。ネット依存を題材としたは他にもあるが、書が類書とちょっと違うのは、こうした依存症ビジネスを否定・糾弾するのではなく、人間心理への深い理解を促すことに重心が置かれている点だ。著者はニューヨーク大学の行動経済学や意思決定の心理学

    『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ
  • 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ

    具体的な数字やデータを示してもダメ。明晰な論理で説いてもムダ。そんなとき、あなたはきっとこう思ってしまうのではないか。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」。 実際問題、日々の生活でそんな思いを抱いてしまう場面は少なくないだろう。失敗例がすでにいくつもあるのに、それでもまだ無理筋を通そうとする社内のプレゼンター。子育てのあり方をめぐって、何を言っても聞く耳を持ってくれないパートナーなど。また不思議なことに、たとえ高学歴の人であっても、「事実に説得されない」という点ではどうやらほかの人と変わらないようだ。 さて書は、冒頭の問いを切り口としながら、人が他人に対して及ぼす「影響力」について考えようとするものである。心理学と神経科学の知見を織り交ぜつつ、著者は早々に厳しい診断を下す。 多くの人が「こうすれば他人の考えや行動を変えることができる」と信じている方法が、実は間違っていた…。 数字や統

    『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ
  • 『アスペルガー医師とナチス 発達障害の一つの起源』現代の精神医学とナチス 光と闇の意外なつながり - HONZ

    医師にとって自らの名が診断名に冠されるのは名誉なことに違いない。だが「アスペルガー症候群」に名を冠した医師ハンス・アスペルガーにとって、それは胸を張って誇れた名誉だろうか。 アスペルガーは、ナチス統治下のオーストリア・ウィーンで小児科医として活躍した。敬虔なカトリック教徒でナチスにも入党しなかった彼は戦後、ナチスに抵抗した人物として評価された。また戦中に障害のある子どもたちを迫害から守るため、彼らには特殊な能力があると診断し、「第三帝国に貢献できる人材だ」と主張して命を救った経緯から、良心的な医師としても尊ばれた。 だが書で描かれるアスペルガーの人物像は、これまでの慈愛と反骨のイメージを覆す。筆者が史料を丁寧に掘り起こすことで白日の下にさらした裏の顔は衝撃的である。 ナチスの悪名高い政策の1つが「T4プログラム(成人安楽死プログラム)」だ。同政策の下、ナチスはドイツ民族にふさわしくないと

    『アスペルガー医師とナチス 発達障害の一つの起源』現代の精神医学とナチス 光と闇の意外なつながり - HONZ
  • 人文文化と科学文化の融合──『なぜ脳はアートがわかるのか 現代美術史から学ぶ脳科学入門』 - HONZ

    なぜ脳はアートがわかるのか。そんなことをいうと、「いや、そもそも自分にゃさっぱりアートはわからねえ」という人がわらわら湧いて出そうだが、かくいう僕もそのタイプ。真四角の図形をぽこぽこ置いて、赤だの黄色だので適当に塗ったとしか思えない絵が抽象絵でありアートなのだと言われても素人が作ったものとの違いがよくわからないことが多い。 だが、ある意味ではそういう人たちにも読んでほしいだ。これを読むと、なるほど、確かに人間は、そうした一見意味がよくわからない抽象的なアートを「わかる」ことができるのだということが、脳科学的な観点から理解することができるようになる。また、普段からアートを楽しんでいる人たちも、ターナーやモネ、ポロックにデ・クーニングなど無数の画家の作品と脳についての知見を通すことで、一つの解釈として楽しむことができるだろう。著者のエリック・R・カンデルは記憶の神経メカニズムについての研究に

    人文文化と科学文化の融合──『なぜ脳はアートがわかるのか 現代美術史から学ぶ脳科学入門』 - HONZ