視覚障害者が指で読む文字の「点字」は、1マス6個の凸点の組み合わせで複雑な数式まで表現する。かつては高度な内容を表せなかったが、試行錯誤が繰り返され、日本独自の「点字数式」が作られた。数学を学ぶ可能性を切り開いた先達たちの軌跡に迫った。 「点字によって、視覚障害者は自分で読み書きできる文字を獲得した。ただし数式は『追加』と『変更』を繰り返す運命をたどることになった」。日本点字委員会の金子昭副会長(80)は、点字数式の歴史をそう説明する。 点字が日本で初めて使われてから、今年でちょうど130年になる。まずは、点字の歴史を簡単にたどっていきたい。