「ものすごく貴重な本も普通に並んでいる」。経団連レファレンスライブラリーに長く勤めた社史研究家の村橋勝子さんは、県立川崎図書館の4階にある社史室の特色を端的に表す。 1万6千冊を超える全国随一の社史コレクション。その魅力は数だけではない。書棚から本を手に取って見られる「開架式」が、利用者の絶大な支持を集めているのだ。 10年ほど前、村橋さんは毎週末ここに通い、1万冊以上をひもといた。その成果は400ページ超の大冊「社史の研究」に。「その場で閲覧、コピーできることに意味がある」 シリーズ累計で150万部を突破した「日本鉄道旅行地図帳」(新潮社)を監修した地図研究家の今尾恵介さんも、執筆の過程で同館の「開架式」に助けられた。鉄道会社や路線、駅の変遷を、数十冊の社史で確認したという。「片っ端から見られるメリットは大きかった。1冊ごとに閲覧請求が必要になれば、書ける本も書けなくなる」 ◆「