ウィトゲンシュタインの「論理哲学論考」で、もっとも有名なフレーズは、最後の一文「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」(論考.7)であるが、私には、その少し前に書かれている次の一節(6.52)がいつも頭にある。 科学の道を選び、物理学科に学びながら、科学と生の問題との狭間に悶々とするものを覚え、科学哲学の門を叩き、そこで出会ったのが、大森荘蔵先生であり、ウィトゲンシュタインであった。1957年。大森先生は、当時2度目の米国留学から帰ってまもなく。耳新しい分析哲学のエースとして知られていた。まだウィトゲンシュタインが何者であるか、日本ではほとんど知るひともなかった(「論考」の和訳が1968年)。先生は、わずか数人の学生を相手に、タイプ印字ガリ版刷りの "Blue Book"(「青色本」) をテキストに、ウィトゲンシュタインがケンブリッジでしたように、行きつ戻りつの思索を、私たちの面前で
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