山田康雄さんのことを、ある程度の字数でもって語るのは、実はこれが初めてだと気づいて、ちょっと自分でも驚いている。そもそもマンガ家である筆者が吹替のことについて文章を書いたり書かされるようになったのは、95年刊の“とり・みき&吹替愛好会”と銘打った複数のライターによる共著『吹替映画大事典』(三一書房)がきっかけだった(あちこちでいっているが現時点から見ると取材不足やデータの誤謬も多いので、リファレンス用としてはもはやお薦めしない)。 本来は、業界に精通している人が著したそうした本を読みたいと思っていた我々が、分際を省みず先の本を作ろうと思い立ったのは、長い間慣れ親しんできた声の出演者の物故が続いたからだった。しかし、やや遅きに失したというか、企画がスタートしてまもなく、我々は山田康雄の訃報をも聞くことになる。吹替をリードしてきた重要人物の一人として直接お話をうかがいたかったのだが、これはつい