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ブックマーク / blog.goo.ne.jp/clean110 (7)

  • 最期の日 - 特殊清掃「戦う男たち」

    ある女性が亡くなった。 死因は乳癌、30台半ばの死だった。 その一年半前、女性とその夫は二人の間に子供ができたことを喜んでいた。 お腹の中で胎児がスクスクと育っていることを実感し、幸せな日々を送っていたことだろう。 そんなある日、女性は胸の異変に気づいた。 念のために病院で検査。 そこでの診断は乳癌。 しかも、かなりの悪性。 軽率な表現になるが、まさに「天国から地獄」と言ったものだっただろう。 医師と夫婦は悩んだ。 抗がん剤の投与は胎児に悪影響がでる。 しかし、このまま放っておけば、出産まで命が保てるかどうか分からない。 そんな苦悩から出された結論は、最小限の投薬を行いながら、胎児の成長を待つ。 そして、帝王切開で出産の後、格的な癌治療を開始するというものだった。 「身体が病むことより、子供が病むことの方が恐い」 女性は、そんな生き方をみせた。 癌細胞の拡大転移より早い胎児の成長を、命が

    最期の日 - 特殊清掃「戦う男たち」
  • 人間の価値 - 特殊清掃「戦う男たち」

    故人は老いた男性。 遺族とは遺体処置の業務で、一時間余り時間を共にした。 私が尋ねた訳でもないのに、遺族は息つく間もなく私に話し掛けてきた。 話の中身は故人の自慢話。 どうも、故人はそれなりの社会的地位だったらしい。 それが遺族にとっては自慢に思えて仕方がないようだった。 家柄・学歴から始まり、勤めていた企業、そこでの肩書、やってきた仕事などを誇らしげに喋っていた。 まるで、「故人は、この社会になくてはならない価値ある人」と言わんばかりの勢いだった。 ただ、私には、生前の故人を偲び、讃えて(労って)いるようには聞こえず、ただ優越感を楽しんでいるようにしか思えなかった。 だから、私には耳触りのいい話ではなかった。 私は、特に反応することもなく黙って聞き流していた。 しかし、遺族はそんな冷淡な態度に不満を覚えたのか、どんどんと自慢話をエスカレートさせてきた。 「何か反応しとかないと、この話は終

    人間の価値 - 特殊清掃「戦う男たち」
    funaki_naoto
    funaki_naoto 2006/10/18
    「人間の価値は人が決められるものではない、人が決めてはいけない」
  • 勇気 - 特殊清掃「戦う男たち」

    ある日、女性の声で電話が入った。 タドタドしい喋り方と、的を射ない内容に、始めは間違い電話?イタズラ電話?と思ってしまった。 しかし、話を聞いているうちに、この電話が間違いでもイタズラでもないことが分かった。 話の内容はこうだった。 「自分はかなりの高齢者」 「自宅で独り暮しをしている」 「難病にかかり、歩行も困難」 「週一回、ホームヘルパーが来る」 「子供はいるが、離れて暮らしている」 「死期が近いものと覚悟している」 「愛着のある、この家で死にたい」 「孤独死したときのために備えておきたい」 私は話の内容を聞いて、この女性が独り暮しを続けていることが信じらなかった。 ただ、家と家族への愛着が並大抵ではないということが、すぐに理解できた。 私が言うまでもなく、女性は遺言を残しており、残された人が困らないような配慮をしていた。 残された問題は、身体のこと。 どんなに死の準備を整えたところで

    勇気 - 特殊清掃「戦う男たち」
  • 真友(後編) - 特殊清掃「戦う男たち」

    汚染部分の解体撤去から出た廃材を片付ける私に、依頼者の男性は意外なことを質問と依頼をしてきた。 「そのゴミはどうするのですか?」 「可燃ゴミですから、焼却処分します」 「もっと別な処分方法はありませんか?」 「?・・・リサイクルはできませんし・・・廃棄物ですからねぇ・・・」 「この廃材も、○○さん(故人の名前)の身体の一部のような気がして、ゴミとして捨てるのは偲びなくて・・・」 「んー・・・あとは、遺品の類でしたら、供養処分することがありますが・・・」 「そうですか!でしたら、その供養処分をお願いします」 「え!?費用が余分にかかりますよ」 「大丈夫ですから、供養して下さい」 故人の愛用品や人形・布団、仏壇などの供養処分を依頼されることは多いが、廃材のそれを頼まれるのは極めて珍しい。 さすがに不思議に思って、そこまでやる理由を尋ねてみた。 「○○さんは強く・厳しく、まるで姉のような人でした

    真友(後編) - 特殊清掃「戦う男たち」
  • Go to heaven - 特殊清掃「戦う男たち」

    誰も死も、どのような死も、ある人にとっては辛く悲しいもので、ある人にとってはそうとは限らないものでもある。

    Go to heaven - 特殊清掃「戦う男たち」
  • 別れの時 - 特殊清掃「戦う男たち」

    そんな私であったから、若い頃は極めてクールにこの仕事をこなしてきた。割り切る所は割り切って(仕事でやっている以上は、今でもそういう時はあるが)。

    別れの時 - 特殊清掃「戦う男たち」
  • 明日があるさ - 特殊清掃「戦う男たち」

    私達のほとんどは当たり前のように今日を迎え、明日が来るのも当たり前だと思って生きているのではないだろうか。死体業を長くやっていると、その辺の感覚は一般の人の比べると鋭くならざるを得ない。

    明日があるさ - 特殊清掃「戦う男たち」
    funaki_naoto
    funaki_naoto 2006/06/27
    「自分に明日があることは何ら保証されたものではない」
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