ある日、女性の声で電話が入った。 タドタドしい喋り方と、的を射ない内容に、始めは間違い電話?イタズラ電話?と思ってしまった。 しかし、話を聞いているうちに、この電話が間違いでもイタズラでもないことが分かった。 話の内容はこうだった。 「自分はかなりの高齢者」 「自宅で独り暮しをしている」 「難病にかかり、歩行も困難」 「週一回、ホームヘルパーが来る」 「子供はいるが、離れて暮らしている」 「死期が近いものと覚悟している」 「愛着のある、この家で死にたい」 「孤独死したときのために備えておきたい」 私は話の内容を聞いて、この女性が独り暮しを続けていることが信じらなかった。 ただ、家と家族への愛着が並大抵ではないということが、すぐに理解できた。 私が言うまでもなく、女性は遺言を残しており、残された人が困らないような配慮をしていた。 残された問題は、身体のこと。 どんなに死の準備を整えたところで