学ばなければではなく、学びたい、知りたいから学ぶ。自身の体験や問題意識に基づいた理由があると、学びはもっと豊かになる。学び直す道を選んださまざまな職業人に、学びのスタイルと「私的」な理由を伺います。 差し出された名刺の、内容以上にフォントに目が留まる。向こうもその視線に気づいたのか、さっそく始まる立ったままの講義。 「これは弘道軒清朝こうどうけんせいちょうたいといって、明治期に元薩摩藩士の神崎正誼かんざきまさよしが精魂をかたむけて開発した楷書活字なんです。販売開始したのは1874年だから、デジタルフォントとして現存する最古の和文活字書体で……」 情熱迸る語り手は、多摩美術大学グラフィックデザイン学科の准教授・佐賀一郎さん。近代以降のデザイン史が専門の研究者であり、教育者です。学位論文「明治初期の近代的新聞における活版印刷技術の発展過程の研究」を執筆後、フリーランスのデザイナー/システム開発
