はじめに 『REKIHAKU』011の特集は、顔や身体をつけた道具から、様々な文化・社会の特徴を考えたいと企画しました。なぜヒトは顔に注目するのかを心理学的に解説していただいたり、弥生時代~古墳時代に顔造形がほとんど消えてしまう現象、中国・琉球から九州にかけての顔を持った船、フィクションとしての「付喪神」、中米マヤにおける顔が付いた土器の社会的価値の高さなど、それぞれ特徴的な歴史像が浮かび上がってきました。 中でも、私が研究している縄文文化は、長い歴史の中で、特定の時間・地域だけに顔・身体をもった土器(以下、顔身体土器)が集中的に表れるという特徴をもっています。本誌ではあまり詳しくは取り上げられませんでしたが、歴博では、レプリカを含めて多くの関連資料を所蔵しているので、この機にそれらを紹介したいと思います。 中村耕作(国立歴史民俗博物館・准教授) 縄文時代中期中葉-勝坂式の顔・身体土器 縄