たまには逆さまに見てみようなんのことはない、日本地図をただ天地逆にしただけなのだが、少し思い入れを持って見てみると新鮮な気分に浸れるかもしれない。 明治のころまでは日本の運送は海路に頼っていた。いわゆる「北前船」だ。日本海に面した港湾は喫水の深い船に向かないので、鋼鉄製の動力船が主流になると太平洋岸の港が使われ始めたが、それまでは日本海側こそが「表日本」だったのだ。 そう考えれば、日本海は地中海のような様相を帯びてくる。中国大陸や朝鮮半島は文化をもたらしてくれる「向こう岸」だ。今でこそ「裏日本」と揶揄されているけれど、日本海側はつい100年ほど前までの数千年間、ずっと表玄関だったことを忘れてはいけない。 オーストラリアの世界地図は、南が上だという。いつもの向きと反対に見てみることで、自分の中の常識が単なる固定観念に過ぎなかったことがわかってくるものだ。
