経済学者のタイラー・コーエンは、自身のポッドキャスト番組に社会心理学者のジョナサン・ハイトを招き、悪化が懸念される子供たちのメンタルヘルスについて議論を交わした。 親の政治的信条が子供に与える影響はあるのか、SNSに人類が適応するのは可能なのか──などコーエンが投げかける話題は多岐に渡る。 米国を代表する知性二人による刺激的な対話から見えてくる私たちの未来とは?
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本稿は社会心理学者ジョナサン・ハイトの未邦訳書『The Anxious Generation(不安な世代)』の抜粋である。第一回はこちらから。 スマホの罠から抜け出す4つの規範 子供とその親たちはスマホを使い続ける「集団行動の罠」にはまっている。どれも個々の家庭で抜け出すのは難しいが、家庭、学校、地域社会が連携して行動すれば、抜け出すのはずっと容易になるはずだ。 ここからは、スマートフォンに支配された子供時代に終止符を打つための4つの施策を紹介する。 地域コミュニティがこの4つを実践すれば、2年以内に若年層のメンタルヘルスに大幅な改善がみられると私は信じている。
スマホやソーシャルメディアが子供たちに害を与えているという懸念が高まっている。スクリーンを見つめつづける生徒たちに、米国の学校も困惑しているが、そんななかで、生徒のスマホ使用の制限に成功した副校長がいた。 米国の中学校副校長の挑戦 2年前、レイモンド・ドルフィンがコネチカット州のあるイリング中学校の副校長になったとき、生徒たちの様子がおかしいのは明らかだった。 問題はスマホだった。校則で禁止されているにもかかわらず、生徒たちは授業中に携帯電話を使っていたのだ。ソーシャルメディアによって、生徒間の対立はほとんどすべて悪化していた。廊下やカフェテリアを見ると、スクリーンにかじりつく生徒がほぼ必ず目についた。 そこで2023年12月、ドルフィンは思い切った決断をした。携帯電話の使用を禁止したのだ。生徒や保護者の一部からは反発を受けた。しかし、この実験はすでに予想以上に大きな成果を生んでいる。
スマホのない日曜日を スマホから距離をとりたいと願いながら、なかなか実現できない大人たちは大勢いる。そして、我が子をスマホから遠ざけたいと願う親たちも。だがいま、スマホやソーシャルメディアに疲れ、自らそれらと距離を置こうとする子供たちが現れ始めている。 日曜日、10代の若者たちが、ニューヨーク・ブルックリンの中央図書館の階段に集まった。彼らはソーシャルメディアやテクノロジーから解放されたライフスタイルを促進する高校生のグループ、「ラッダイト・クラブ」のメンバーたちだ。 プロスペクトパークへ向かう道中、彼らは自分のiPhoneをしまった。なかには、スマホでなくガラケーを持つメンバーもいる。彼らは丘を登り、公園の人混みから遠く離れた小山に向かう。
「思い出せる記憶がない」ということ スマホが新たな知識の展望を切り開いたのは間違いないが、現代人はスマホのせいで、「今この瞬間」から引き離されてしまうこともある。 たとえば、スマホでずっとメッセージのやりとりをしていたために、今日が素晴らしい日だったことに気づかなかったりする。上の空で経験したことを、あとでちゃんと思い出せる確率は低い。そして思い出せることが少なければ、新しい考えを思いつく能力やクリエイティビティすら限られたものになってしまう。 著名な神経科学者で、記憶について研究しているウェンディ・スズキは、最近あるポットキャストでこう語った。 「自分がしてきたこと、学んできた知識、人生に起きた出来事を思い出せないということが、私たち人間を変えてしまいます。(中略)記憶を司る脳の領域は、まさに私たちの生い立ちを定義します。私たちが何者であるかを定義するのです」 『スマホとお別れするには』
オランダのマルク・ルッテ首相(55)は、一昔前はみんなが持っていたが、今ではほとんど見られなくなった“あるもの”を愛用している。 それは、スマートフォンではない携帯電話、日本で言う「ガラケー」である。大きくて画質の良いタッチスクリーンはなく、You Tubeや各種SNSなどのアプリも入っておらず、電話とメッセージといった最低限の機能しか搭載していないものだ。 英語では「スマートフォン」の対義語として「ダムフォン(dumbphone:直訳すると、「バカな電話」)」と呼ばれている。 オランダ紙「フォルクスクラント」によると、ダムフォンを愛用する理由としてルッテは、入力が簡単なこと、セキュリティが優れていること、余計なアプリに気を取られなくて済むことを挙げている。 首相という立場上、スマートフォンに時間を使っている暇などないから仕方がないのかもしれない。あるいは、ルッテは時代の流れに最後まで抵抗
元ジャーナリストで気鋭の未来学者のエイミー・ウェブは、AI(人工知能)からアルゴリズムでの恋人探しの経験、正しい占い方の追究まで、幅広いテーマでノンフィクション本を著している。そんな彼女の新刊『The Genesis Machine』(共著。未邦訳)のテーマは合成生物学。医薬品から食品、人間にいたるまで、科学によってこれまでとはまったく違う「作り方」ができるようになるという考え方である。 ──あなたの新著を読むと、人間がどう作られるかについて信念をお持ちだと感じます。たとえば、受精の年齢的な障壁がなくなる、あるいは体外で胚を育てることが可能になるとしたら、私たちの社会は根本から変わってしまうのでしょうか。 実は私たちは、科学がこれほど発展したらどうなるのか、立ち止まって考えてみたことがありませんでした。 子どもを作るというのは、一人の男性と一人の女性にふさわしい生殖構造があることが必要でし
スマホやタブレットによって、瞬間的な満足をただちに得られるようになった現代。同時に、SNSやポルノ、オンラインゲームなど、デジタル機器による依存に悩む人の数も激増している。 もはや日常に欠かせなくなったこれらのデジタル機器と、健全な距離を保ちながら生きるにはどうしたらいいのか? スタンフォード大学の精神科医であり依存症のエキスパートであるアンナ・レムキに、英紙「オブザーバー」が聞いた。 数分おきにスマホを触ってしまう記者 アンナ・レムキ医師は依存症研究の世界的権威であるが、そんな彼女が今、私の「スマートフォン問題」を心配してくれている。 インタビュー中、私はつい彼女に打ち明けてしまったのだ。自分が不健康なほどiPhoneを気にしており、ほとんど衝動的に、それを数分おきにチェックしてしまう、と(よくある話だろうか?)。 レムキはそういう状態を許さなかった。スマートフォンを鍵のかかる引き出しに
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