これは「カルチュラル・スタディーズ」ではない 『シチュアシオン − ポップの政治学』上野俊哉著(作品社/1996年/2800円) 『思想』1月号、『現代思想』3月号と、立て続けにカルチュラル・スタディーズ(以下CS)の特集が組まれ、70−80年代を通じて英米圏における現代文化研究の一大潮流であり、現在のIASPM系ポピュラー音楽研究者達にも多大な影響を与えているこの学派が日本にも本格的に紹介されはじめた。そしてタイムリーにも、CSを名乗ったものとしては恐らく日本初の書である本著がこの2月に出版された。周知のように著者上野俊哉は、朝日新聞書評委員(ポップ・アカデミズム担当?)としても活躍する一方、ロック・社会思想・現代都市文化などをフィールドに旺盛な批評活動を行っている。本著は彼のこれまでの関心領域を、方法意識としてのCSを縦軸に、そしてフランス五月革命の理論的主軸をなした政治運動