6月30日に行なわれたシンポジウム「アビ・ヴァールブルクの宇宙」読み上げ原稿を公開します。[P1]などとあるのはスライド番号ですが、これら図版類はネット上での公開を見合わせます。 田中 純(東京大学) ヴァールブルクにとっての『ムネモシュネ・アトラス』は絶えず変化し続ける産物であり、いわば終わりのない「開かれた作品」でした。ですからそれは、時間的変化としての「通時態」と、ある段階における「共時態」の二つの側面から分析されなければなりません。本日の発表のタイトルはここに由来しています。つまりわたしの発表では、『ムネモシュネ・アトラス』が扱っている「イメージの歴史」それ自体ではなく、『ムネモシュネ・アトラス』を構成するパネル群の通時的変化と共時的構造が話の焦点になります。この点をあらかじめご承知ください。 [P2]今日の発表の前半は、共時態の構造に着目します。具体的にはまず、ムネモシュネ・アト