タグ

ブックマーク / honz.jp (35)

  • グラスのなかには驚きの世界。『たたかうソムリエ』 - HONZ

    ソムリエという存在を、私は完全に誤解していた。 グラスに注がれた高級ワインに、ポエティックな表現と薀蓄を添えてサーブしてくれる少々気障な存在。恥ずかしながら、そんな先入観を持っていた。 でも、書を読んで心の底から理解した。 己の知性と感性の全てを賭けてワインと対峙する物のスペシャリスト。経験に裏打ちされた華麗な技術を次々と繰り出す究極のサービサー。そして、お客様に最高の時間を過ごしてもらうために、人生の全てを惜しみなく捧げて毎日を生きる真の人格者。 それが、ソムリエ。それも、世界最高レベルのソムリエなのだと。 書は、2010年にチリで開催された第13回世界最優秀ソムリエコンクールを追ったノンフィクションだ。世界各国から選ばれた総勢54人のソムリエたちが、世界ナンバーワンの座を賭けて、その技術とセンスを競い合う。4月10日のウェルカム・パーティーで幕を開けた大会は、6日間にわたって開催

    グラスのなかには驚きの世界。『たたかうソムリエ』 - HONZ
    gauqui
    gauqui 2013/03/06
  • 『ウイルス・プラネット』生物界のイノベーター - HONZ

    ウイルスをテーマとしたサイエンス・エッセイだ。取り上げられているのはタバコモザイクウイルス、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、バクテリオファージ、ヒト免疫不全ウイルス、天然痘ウイルスなど13種のウイルスである。それぞれのウイルスのカラー電子顕微鏡写真が付いていて1500円。1ウイルスあたり115円ちょっとだ。考えようによってはじつに安い買い物なのだ。 最初のテーマはタバコモザイクウイルなのだが、それに先立ってウイルスとは何かについて意外な方法で理解させてくれる。著者がまず取り出したのはメキシコにある「巨大結晶の洞窟」だった。 写真の左右に見えるオレンジ色の物体は人間である。結晶化している鉱物は透明石膏だが、気温は58度を超え、湿度は100%近いため、宇宙服のような装備で調査しているのである。ともかく、この人類どころか、すべての生きものから隔絶した洞窟からウイルス学者は水のサンプルを取

    『ウイルス・プラネット』生物界のイノベーター - HONZ
  • 『ヒッグス粒子とはなにか』新刊超速レビュー - HONZ

    正直に言おう。ヒッグス粒子をまったく理解できないのだ。子供のころからブルーバックスなどで素粒子論や宇宙論を読んできたから、クオークやビッグバンまではなんとか判ったような気でいたのだが、ヒッグス粒子については読んでも読んでもまったく理解できない。つまり、クオークもビッグバンもちゃんとは理解していなかったというわけだ。 それでは書でヒッグス粒子を判ったかといえば、やはりまったく理解できない。ヒッグス機構とはゲージ対称性の自発的やぶれに関する理論などと説明されても、なにがなんだか判らない。ヒッグス粒子発見は世紀の出来事であり、それは出版界の期待の星だから、日でもここ数ヶ月で10冊近い書籍やMOOKが出版されている。そのほとんどを手にとったが、ぜんぜん理解できない。 それは物理学者以外にとって共通のようで、書にはイギリスの新聞ガーディアン紙が掲載したヒッグス粒子のいろいろな説明方法がしるされ

    『ヒッグス粒子とはなにか』新刊超速レビュー - HONZ
    gauqui
    gauqui 2013/02/21
  • 『ヒップホップの詩人たち』 地方からのリアルな言葉 - HONZ

    音楽ソフト(CD、DVDなど)の売り上げ低下、アイドルたちに独占されるヒットチャート、若者の音楽離れ。音楽業界には悲観的なニュースが飛び交っている。日ではもう新たな音楽は生まれていないのか、ぶつける先のない思いを音に託す若者はいなくなったのか。もちろん、そんなはずはない。 著者である都築響一は、今いちばん刺激的な音楽は地方から発信されているという。大手レコード会社やマスメディアの集まる東京から遠く離れたストリートで、自らが生まれ育った街にとどまり、刺激的なビートにリアルな言葉を乗せているラッパー達がいるという。 彼らはどのような人生を歩み、どのようにヒップホップと出会い、なぜ今でも地方でラップを続けているのか。著者は、札幌、山梨や京都など全国各地に赴く。599ページにわたる書には、15名のラッパーたちへのインタビューとともに、彼らのリリック(詩)が多数掲載されている。彼らが住む街、ライ

    『ヒップホップの詩人たち』 地方からのリアルな言葉 - HONZ
    gauqui
    gauqui 2013/02/12
    欲しい
  • 『IDOL DANCE!!! 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい』 - HONZ

    AKB48、ももいろクローバー、KARA、少女時代…2013年現時点でのエンタテイメント業界はその役者の揃いぶりからアイドル戦国時代とも呼ばれる。確かにPerfumeのライブは完成度も高く「アイドル=見習い」というイメージから逸脱している。単純に可愛く歌って踊るだけのプロトタイプのユニットは終焉し、これからは視覚的パフォーマンス、とりわけダンス部分がもっと重要視されていくだろう。 書は表紙がとても可愛らしいが、中身はアイドルのダンスについて真正面から取り組んでいる。振付師である著者の竹中夏海はアイドルダンスというジャンルはそもそも存在するのか?と問い続けた結果、その特徴は振りコピの文化ではないか、と定義している。一般の人でも、映画を観るように会場に足を運び、振り付けを真似できる一体感にアイドルダンスの可能性を見出した。 そもそも著者は日女子体育大学舞踊科の出身だ。ダンス界において信頼で

    『IDOL DANCE!!! 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい』 - HONZ
  • 『沖縄軍人妻の研究』 知られざる米軍兵士の憂鬱と自立する日本人妻 - HONZ

    「沖縄軍人」。響きがたまらない。実は完全なタイトル買いだ。凛とした中に、日活ロマンポルノのタイトルにもなりそうな色香を感じられる。これほど魅惑的な5字の漢字があったのか。「沖縄軍人」。 版元は京都大学学術出版会。堅そうである。実際、書は学術書だ。ポルノ云々言ったことを謝るべきだろうか。私の棚では圧倒的な存在感を放ち、すでに浮いている。 とはいえ、書は学術書にありがちな修飾句の多様などによる読みにくさとは無縁だ。沖縄の米軍兵士と日人女性との結婚離婚を考察し、まとめたものだが、インタビューの内容に基づいて構成されているため、肩肘張らずに読み進められる。 沖縄の海兵隊基地で米軍兵士22人と、米軍兵士と結婚した日50人にそれぞれ出会いから結婚までの過程や、親族つきあい、老後の生活設計から性交渉の状況、基地問題に対する考え方までを聞き取り調査している。基地内の創価学会ネットワーク

    『沖縄軍人妻の研究』 知られざる米軍兵士の憂鬱と自立する日本人妻 - HONZ
    gauqui
    gauqui 2013/01/30
  • 『「つながり」の進化生物学』 進化するのがコミュニケーション - HONZ

    書の著者の岡ノ谷先生は、鳥の研究から始まり、現在は感情や心の研究を行っている東大の先生だ。また、「岡ノ谷情動情報プロジェクト」の研究総括であり、理化学研究所のチームリーダーでもある。そして、HONZ的には、あの『ハダカデバネズミ』や、ジュウシマツの歌についての『さえずり言語起源論』の著者である。であるからして、読む前から既におもしろいことが確定しているのだ。書は、岡ノ谷先生が埼玉の高校生16人に行った4日間の講義を書籍化したものだ。そしてさすがは『単純な脳、複雑な「私」』を出している朝日出版社。1500円のによくぞここまで、というお得感のある一冊である。最近の高校生にはチャンスがたくさん転がっている気がするのは私だけだろうか。この講義、私も受けたかった。若いって素晴らしい。先生も楽しまれた模様で、 高校生たちの熱意にひきずられ、1回の講義に、1冊分くらいのネタを惜しげもなく入れてし

    『「つながり」の進化生物学』 進化するのがコミュニケーション - HONZ
    gauqui
    gauqui 2013/01/29
  • でかいぞ! 偉いぞ! 立派だぞ! 『ダムの科学』 - HONZ

    ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書) 作者: 一般社団法人 ダム工学会 近畿・中部ワーキンググループ 出版社: ソフトバンククリエイティブ 発売日: 2012/11/19 高度成長時代、安定した電力を供給するため、たくさんのダムが造られた。そのころ、ダムといえば未来に羽ばたくまばゆい存在であった。ところが最近は、不要な公共事業の代表にされ、環境破壊の悪玉にされ、どうも評判がよろしくない。これはいささか理不尽ではないか。ダムはどっしりと大きくかまえ、じっとしているだけなのに。このを読んで、その気持ちがいちだんと強まった。ほんとにダムはすごいのだ。 日でいちばん有名なダムは、あの石原裕次郎がつくった映画『黒部の太陽』の舞台になった黒部ダムだろう。このかっこいい映画を見てダムにかかわる仕事に就かれた人もたくさんおられるそうだ。立山黒部アルペンルートの中

    でかいぞ! 偉いぞ! 立派だぞ! 『ダムの科学』 - HONZ
  • 『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』 なぜ、ルネサンスが起きたのか? - HONZ

    書の主役である「すべてを変えた一冊」とは、地球が世界の中心ではないことを明らかにしたガリレオの『天文対話』でも、生命に進化という概念をもたらしたダーウィンの『種の起源』でもない。暗黒の中世に別れを告げ、大航海時代を迎えようとしていた1417年のヨーロッパで、その一冊は1人のブックハンターの手によって発見された。 その一冊とは、紀元前1世紀頃に著された『物の質について』である。詩人であり、哲学者であったルクレティウスの手によるこのは、古代ローマの同時代人にも受け入れられることなく、時の経過とともに忘れ去られていく。そのため、15世紀初めの頃には『物の質について』は写の一冊も見つけられない幻の書となっていた。このが発見されなければ、ルネサンスの起こりはもっと遅れていたかもしれない。このの価値に気づき、その内容を広めようとする人がいなければ、近代の姿は今とは大きく異なるものとなって

    『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』 なぜ、ルネサンスが起きたのか? - HONZ
    gauqui
    gauqui 2012/12/12
  • 「夏に読む極上の歴史書」 週刊エコノミスト 8月17・24日合併号 - HONZ

    1789年7月14日のバスチーユ監獄襲撃からフランス革命が始まった。この2年前からフランスの気候は不順で、穀物の収穫量は平年の3分の2になり、小麦価格は2倍に高騰していたのである。 5年後の1794年も天候は最悪であり、フランスでは大規模な糧暴動が発生した。この年7月にジャコバン党のロベスピエールは刑場の露と消え、革命は転換点を迎えたのだ。 フランス革命は民法やメートル法など、のちの世界に思想や制度で多大な影響をあたえたことは誰でも知っている。しかし、そのきっかけのひとつが気候であったことはあまり知られていない。 E・ル=ロワ=ラデュリ著『気候と人間の歴史・入門』著者は書で中世以降現代までのヨーロッパにおける、気候が人間社会に与えた影響を語る。まさにアナール派歴史学の入門書だ。 アナール派ではないのだが、その特徴のひとつである、長期的な経済史を、よりグローバルな視点で取り扱っているのが

    「夏に読む極上の歴史書」 週刊エコノミスト 8月17・24日合併号 - HONZ
  • 『ライフ=ワークス=プロジェクト』 NODE No.10 書評 - HONZ

    クリストとジャンヌ=クロードの作品のなかで、1985年の「包まれたポン・ヌフ」と1995年の「包まれたライヒスターク」だけは観てみたかった。 2005年、ニューヨークのセントラルパークで、彼らが7500あまりのオレンジ色のゲートを建てた映像は観ているのだが、この2つの作品のように歴史的建造物をすっぽり包むというような強いインパクトは感じなかった。 新しい橋という意味の「ポン・ヌフ」はパリ最古の橋である。アンリ3世時代に起工され1606世に完成した。二人はこの実在する橋を4万平方メートルあまりのポリアミド合成繊維で包んでしまったのだ。展示は2週間におよび、300万人が見物に来たという。許可を与えたのはのちに大統領になるジャック・シラク市長だった。 いっぽうのライヒスタークはベルリンにある旧帝国国会議事堂であり、現在もドイツ連邦議会が置かれている。彼らはこの巨大な建物を10万平方メートルのポ

    『ライフ=ワークス=プロジェクト』 NODE No.10 書評 - HONZ
    gauqui
    gauqui 2012/11/29
  • 『東洋経済2/6号』の記事を読んで、つぶやいてみる - HONZ

    週刊「東洋経済」が2月6日特大号で読み応えのある特集をしている。「2020年の世界と日」だ。社内記者による週刊「エコノミスト」のような記事づくりが成功しつづけているようだ。面白そうなので、記事のいちいちにコメントしてみる。 「5人の賢人が描く2020年」というサブ特集ではジョージ・フリードマン、エズラ・ボーゲル、大前研一、金燦栄、中西輝政の5人が登場する。 フリードマンはかなり怪しい。21世紀は米国の時代となり、その繁栄はこれからだというのだ。しかし、アメリカ国内の富のピラミッドが世界のそれと相似形になる日が近いことは自明だ。これはもう無視できない不安要素だ。知識もいいかげんで、日はわずかな時間で核兵器を作れると思っているらしい。しかし、万が一GOがでても、最低10年はかかるというのが常識だろう。そして、2050年には日アメリカの唯一の対立軸になるという。ゴホゴホ。 ボーゲルは現実

    『東洋経済2/6号』の記事を読んで、つぶやいてみる - HONZ
  • 週刊朝日12月11日号 「ビジネス成毛塾」 『キリマンジャロの雪が消えていく』 - HONZ

    書のタイトルは『キリマンジャロの雪が消えていく』と抒情的だし、副題も「アフリカ環境報告」で、地球温暖化を恨むばかりの、ありふれた書籍の一冊であるように見える。 しかし、書において温暖化問題は議論の一部でしかない。人口爆発とその影響、天然資源とガバナンス、先進国の援助とその光と影など、多様な観点からアフリカの現在が描き出されている。 これからは書を読んでいることを自明としてアフリカに関するさまざまな議論が進むようになるかもしれない。少しでもアフリカに関わるビジネスマンの必読書であることは間違いないだろう。 第1章はアフリカの地理と気候と有史以前の歴史についての概観だ。わずか23ページなのだが、事実だけを、数字を使い、過不足なく、流れるように記述している。一文字の無駄もない。 これほど完璧な概況レポートを見たことがない。ビジネスマンが担当する地域や市場についてレポートする場合、このような

    週刊朝日12月11日号 「ビジネス成毛塾」 『キリマンジャロの雪が消えていく』 - HONZ
  • 『裁判百年史ものがたり』 日本をつくった12の事件 - HONZ

    1891年5月11日、2週間前に長崎港から来日したロシア皇太子のニコライは、鹿児島、神戸、京都を経て大津にやって来た。昼をすませた彼は心地よく人力車に揺られながら、今夜の芸妓との楽しい時間に想いをめぐらしていた。少しずつ、だが確実に、死の危険に近づいていることも知らずに。 異国の皇太子目当てに詰めかけた人の群れの中に、鬼の形相でニコライを睨みつける男がいた。その男とは、滋賀県巡査の津田三蔵。ニコライを警備するために大津まで来ていた津田は、職務のことなど完全に忘れていた。このときの津田は、怒りと妄想に支配されていたからだ。もはや正気とは呼べない津田の脳内を、危険な言葉が駆け巡る。 「なぜニコライは真っ先に天皇陛下にご挨拶へ行かないのか?あまりに無礼だ!」 「これは親善目的の来日ではなく、日侵略のための偵察なのではないか?」 手の届く距離にまでニコライが近づいたとき、彼は腰のサーベルを抜き

    『裁判百年史ものがたり』 日本をつくった12の事件 - HONZ
  • 『連邦刑務所から生還した男』 - HONZ

    「自称」FBIの囮捜査で罪を着せられ、カリフォルニアの重罪刑務所をふりだしに11年投獄されていたヤクザの組長のである。アメリカの司法は日の常識では推し量れないところがあるが、それを主張しているのはヤクザなのだから、あえて「自称」と紹介した。著者はプロのノンフィクション作家であり、筑摩書店のである。書の印税が主人公のヤクザの手に渡らないことを信じて紹介する。 第1章のFBIによる囮捜査については前述どおり論評しようもない。しかし、殺人などの重大犯罪ではなく、覚せい剤取引で重罪刑務所に送られたことをみると、あきらかに日のヤクザに対しての威嚇を意図しているのだと思われる。我が国に来ないでくれというメッセージかもしれない。 このブログで紹介する理由は、第2章以降の刑務所での話が面白いからだ。囚人の移送の話からして面白い。アメリカには100を超える刑務所がある。そのためハブとなるオクラホマ

    『連邦刑務所から生還した男』 - HONZ
    gauqui
    gauqui 2012/09/28
  • 『銀座の達人たち』 - HONZ

    最近、表参道から足が遠のいた。表参道ヒルズができたからである。内部のデザインは面白いのかもしれないが、通りに面したファサードがいただけない。完成後も仮店舗のままかと思ったほどである。のっぺりとした画一的な間口はまさに街の面汚しである。 表参道に行く理由の一つは髪をカットするためだった。最近、そのヘアーサロンが銀座に店を出した。表参道で複数の店を展開している有名店なのだが、銀座に目をつけたのだという。表参道から逃げ出したということではないらしいが、人の流れを見ての判断らしい。 その銀座でも一時は190メートルを超える高層商業ビル建設の計画があったらしい。幸いにして銀座通連合会の必死の努力で回避されたという。ありがたいことである。銀座は昼だけの街ではない。突如出現した高層ビルに見下ろされながら、なじみの酒場に入るなど想像するだけで萎えてくる。 『銀座の達人たち』は銀座文化を守りつづける老舗経営

    『銀座の達人たち』 - HONZ
    gauqui
    gauqui 2012/09/21
  • 『文明と戦争』 宿命としての戦争 - HONZ

    人類200万年の「戦争の謎」のほとんどに答えを出そうとする野心的な書は、上下巻合わせて996ページ、総重量1.2kg、翻訳者13名、そして7,560円という規格外のボリュームである。全17章から成る書は3部構成となっており、それぞれが「戦争は人の能か、それとも文明による発明か?」、「戦争と文明の発展はどのように相互作用したのか?」、そして「近代化は戦争をどのように変質させたのか?」を主題として、戦争にまつわる多くの謎に光を当てていく。 そのボリュームに比例して、書の考察対象は途方も無く広いものとなっている。時間軸で見れば、武器すら持たない狩猟採集民時代から核・生物兵器によるテロの恐怖に怯える現代まで、地理的に見れば、先史時代の手がかりを残すオセアニアや南北アメリカから世界の覇権争いを主導したユーラシア大陸まで、学問領域を見れば、人類の能を辿る人類学から制度と現象の因果関係を考察す

    『文明と戦争』 宿命としての戦争 - HONZ
  • 『現代ミリタリー・ロジスティック入門』 新刊超速レビュー - HONZ

    マイクロソフトのOBにはいろいろな人がいる。初代研究所長だったネイサン・ミアボルドの場合はシェフになり、史上最大の料理を出版した。この史上最大の料理の重量は19.3kg、インクの重量だけで1,9kgもある。マッド・サイエンティストならぬ、マッド・シェフだ。この人は2000年の時点で少なくとも5つの学位を持っていた。ビルゲイツが提唱する次世代原子炉テラパワーの共同オーナーでもある。いっぽうで日法人の社長を10年つとめて、「は10冊同時に読め」といい続けながら書評サイトを運営している人もいる。 書の著者もマイクロソフトのOBだ。日のマイクロソフトはセールス・マーケティング部門と開発部門がロケーション的にも、まったく別の組織として存在しているから、この著者とはあまり話したことがない。もともと鉄ちゃんでもあり、ミリオタでもあったらしい。書も完全なるミリオタ専用図書であり、普通の人が読

    『現代ミリタリー・ロジスティック入門』 新刊超速レビュー - HONZ
  • 『精神を切る手術 ―― 脳に分け入る科学の歴史』  脳への介入は許されるのか? - HONZ

    ヒトのDNAを用いる研究では、匿名化や厳重な保管など、サンプルの扱いに厳しい制限がかけられている。個人のゲノムが遠からず千ドルで読めるようになろうかという時代である。どのようなものをべているかで、どのような人間であるかをあててみせる、と、『美味礼賛』のブリア=サヴァランは言ったが、それどころではない。ゲノムがわかれば、その人のいろいろなことがわかってしまうのであるから、そういった規制も当然のことだ。 ゲノムが設計図としてヒトを規定するのに対して、脳は “ヒトの質を担う特別の器官” と捉えることができるのではないか。そうであれば、ヒトの脳研究はゲノム研究と同様に慎重でなければならない。そういった観点からヒトの脳機能研究をどう進めるべきかを考えるべき、というのが、日を代表する生命倫理学者の一人である著者・橳島(ぬでしま)次郎の問題提起だ。そして、その方法論として選ばれたのが、温故知新的な

    『精神を切る手術 ―― 脳に分け入る科学の歴史』  脳への介入は許されるのか? - HONZ
  • 『精子提供 : 父親を知らない子どもたち 』 新刊超速レビュー - HONZ

    おもしろいノンフィクションを紹介するという『HONZ精神』にのっとり、手に取るや置くにあたわず一気読みしたをレビューする、というのを原則にしている。が、今回だけは例外である。内容の重さに、何度も何度も天井を仰ぎ見なければならなかった。しかし、それでも皆さんにご一読をお薦めしたい。親子とは何か、という、おそらく多くの人は気にしたこともないが、根源的な問題を真剣に悩まなければならなくなった人たちの物語を。 『精子提供』は、AID(非配偶者間人工授精)によって生まれた人たちの話である。AIDというのは、不妊の夫婦に、第三者の精子を用いて受精させる「治療法」だ。多くの場合、生まれてきた子供には、AIDで生まれたことが知らされていない。しかし、ふとしたことで、AIDによって生まれてきたことを「知ってしまう」例も多い。そのとき、AIDで生まれた人はどう思うか、そしてどうするか。 誰にも、小さいころ、

    『精子提供 : 父親を知らない子どもたち 』 新刊超速レビュー - HONZ