画家の身分と職分 『美術手帳』の10月号で山下祐二が「教育方法を現行の美大システムから、丁稚奉公、徒弟制度に戻さない限り、なかなか超絶技巧を持った作家は生まれてこないでしょう」(「超絶技巧の絵画史」)とコメントしているが、山下の発言には「丁稚奉公」「徒弟制度」が前提としていたのは、身分制度によって職業が固定化されていた社会という理解が欠けていると思われる。身分制度によって職業が固定化されている社会では、社会的地位の上昇は望めない。そのため人々は自分の活動が許されている職業分野で業績をあげることを目標とするしかなかった。従って、もし丁稚奉公や徒弟制度が有効に機能していたとしたら、それは日本の近世が特定の分野での成功を目標とするしかない状況であったからである。 しかし現代は、江戸時代のように身分と職業が結びついた社会ではない。現代では誰にでも職業を選択する自由がある。例えば画家という職業を、昨