節分になると全国のスーパー、コンビニで大々的に売り出される「恵方巻」。このブームは伝統食の普及なのか、それとも伝統の破壊なのか。 何が「大阪の伝統的風習」やねん!!! ——私たちが紫色の絨毯(じゅうたん)を敷きつめた書斎に通された時、女中が現れて、「少々お待ちください」と言った。 「いま、皆さんで巻き寿司(ずし)を食べてらっしゃいます」 女中は笑いをこらえている。たぶん、関西の生まれではないのだろう。 節分の夜に、家族そろって、巻き寿司を、一本ずつ、無言で食べると、その年は無病息災で過ごせるという言い伝えに、私たちは従っている。年によって、方向が変わるのだが、今年は、たしか、北北西に向かって食べるはずである。 「おまえ、巻き寿司、食うたか」 私は原田にきいた。 「ぼく、寿司が苦手でして、マシュマロですましました」 「すました、て、えらい違いやないか。巻き寿司は、長いまま、食うのやぞ」 「知
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