トランプ後のアメリカ音楽はいかなる変貌を遂げるのか――。激変するアメリカ音楽の最新事情を追い、21世紀の文化=政治の新たな地図を描き出す! カリフォルニア州サンタクララのリーバイス・スタジアムで開催された2016年のスーパーボウル。そのハーフタイム・ショーの途中、スタジアムの真ん中に設置された巨大なDJブースでマーク・ロンソンがスクラッチを始める。カメラが切り替わり、ダンス・クルー、ジャバウォッキーズのメンバーで、フィリピン系のフィル・タヤグを含む四人のダンサーとともにブルーノ・マーズがヒット曲〈アップタウン・ファンク〉を歌い出す。ひとしきりステージを独占したのちに、今度はブラック・パンサーのユニフォームを身にまとった数十人の女性ダンサーを従えたビヨンセが映される。その前日にリリースされたばかりの新曲〈フォーメーション〉のイントロが始まり、アトランタの売れっ子プロデューサー、マイク・ウィル