行き過ぎた非正規社員の活用が問題となったことをきっかけに、正社員への転換を進める企業が増えている。 だが、その多くは合理的な裏付けがなく場当たり的。そのままでは社員の不満が募り、企業の経営にも支障が出かねない──。企業の人事管理を研究する神戸大学大学院の平野教授はこう懸念する。 では、どうしたらいいのか。平野教授は「人材ポートフォリオ」という新しい考え方に基づく処方箋を提示する。 実質的に同じ仕事をしている正社員と非正規社員との処遇格差問題を背景に、非正規社員を正社員に転換する企業が増えている。だが、非正規社員が就く正社員は以前の正社員と同じとは限らない──。 前回にこのような主旨の指摘をしました。人事管理において人件費を増減しやすい「財務的柔軟性」や雇用調整を容易にする「数量的柔軟性」を確保する。こうした狙いから非正規社員の活用を進めてきた企業は、一度手にしたこれらの柔軟性を失いたくない