マルクス経済学者の松尾匡氏の連載2回目『ソ連型システム崩壊から何を汲み取るか──コルナイの理論から』が公開されていた。掴みの部分の1回目*1に比べて脚注も大幅に増えた気がするし、論が精緻になってきた。つまり学術的になってきたのだが、よく考えるとやはり上手いプロパガンダになっている。ミクロ的非効率の存在を厚く議論する一方で、価格メカニズムと言うマクロ的機構の重要性を無視しているからだ。 1. 情報の非対称性と資本主義社会のミクロ的非効率 まずは大雑把に要約してみよう。旧ソ連は適切なリスク配分が行われなかったので過剰設備投資と資材の過剰ため込みが発生したが、資本主義でもリスク配分が不適切で金融危機が発生していると指摘している。リスクより所有権と表現したほうが聞き慣れている気はするが、情報の非対称性や不完備契約の引き起こす問題が資本主義経済にもあるのは違和感は無い。 以前のエントリーで分権経済で