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ブックマーク / call-of-history.com (23)

  • 黒死病(ペスト)流行下(1348~53年)におけるユダヤ人迫害のまとめ | Call of History ー歴史の呼び声ー

    「黒死病(英語Black Death”)」と呼ばれる1347年から1353年にかけての世界的なペスト流行の渦中、ヨーロッパでは各地で暴力や虐殺を含むユダヤ教徒(ユダヤ人)への激しい迫害が展開した。 中世ヨーロッパにおけるユダヤ人二世紀のローマ帝国下での迫害(注1)以来、ユダヤ教徒(ユダヤ人)はパレスティナ地方から世界中に離散した(ディアスポラ)。キリスト教国教化以来迫害は苛烈なものとなり、六世紀に東ローマ帝国(注2)や西ゴート王国(注3)等で大規模な迫害があったが、世界各地に住み着いたユダヤ人たちは宗教的慣習を維持して自治共同体を築き、国際的なネットワークを生かして交易で富を得て存在感を発揮するようになり、特にイスラーム世界で重用され、キリスト教世界でも王権との関係が安定化して寛容な時代を迎える。 ユダヤ人たちはローマ帝国の迫害を逃れてドイツからイベリア半島にかけてのローマ帝国周縁に逃れ

    黒死病(ペスト)流行下(1348~53年)におけるユダヤ人迫害のまとめ | Call of History ー歴史の呼び声ー
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    hanemimi 2020/04/12
  • ジャンヌ・ダルク火刑時の「焼けなかった心臓」の逸話を史料から考える | Call of History ー歴史の呼び声ー

    ジャンヌ・ダルクの心臓が火刑後も焼けずに残ったというエピソードがまことしやかに語られ、聖女ジャンヌの奇跡として取り上げられることも多いようだ。 ジャンヌ・ダルク復権裁判での証言このエピソードの出典はジャンヌ・ダルク復権裁判での関係者の証言である。1431年のジャンヌ・ダルク処刑裁判当時、ルーアン管区司祭長で処刑裁判の召集など運営実務を行う法廷執行吏を務めたジャン・マッシュウ”Jean Massieu”が以下のように証言している。 『私は、ルーアンの国王代官の書記ジャン・フルーリーがこう言うのを聞きました。死刑執行人がジャンに、ジャンヌの躯は焼きつくされて灰になってしまったが、心臓だけは無傷で血がいっぱいだったと語ったというのです。しかし灰と彼女の残したものはすべて一緒に集めて、セーヌ川に捨てるように命令されたので、その通りにしたということです。』(レジーヌ・ペルヌー編著(高山一彦訳)『ジャ

    ジャンヌ・ダルク火刑時の「焼けなかった心臓」の逸話を史料から考える | Call of History ー歴史の呼び声ー
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    hanemimi 2020/03/28
  • 近代女性小説家誕生の歴史を描く意欲作『カイニスの金の鳥』(秦和生 作)感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    あらすじとみどころ――「秘密」と「信頼」時代は十九世紀初頭、英国グロスターシャーの牧師の家に生まれた女性リア・ボイドは幼いころから小説を書いていたが、“女性が小説を書くなんて“”女性に小説は書けない“といった周囲の無理解から、架空の男性アラン・ウェッジウッドを創作してアランの作品と騙るようになった。十九歳になっても小説家の夢捨てきれず、自身の作品をアラン・ウェッジウッドの筆名で出版社に投稿、ついに出版の運びとなり、リアは長い髪を切り、男装してアラン・ウェッジウッドという男性になりきってロンドンへ上京する。ロンドンではマイルズ・キーツという作家の知己を得て、彼のアパートの隣室で、自身が女性であることを秘したまま共同生活を始めることになる――というのが1巻の大まかなあらすじです。 近代、女性に対する抑圧と無理解という逆境の中で自身の夢に向かって突き進む主人公という王道のストーリーラインがまずあ

    近代女性小説家誕生の歴史を描く意欲作『カイニスの金の鳥』(秦和生 作)感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー
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    hanemimi 2020/01/27
  • ジル・ド・レの生涯――百年戦争後期のある中小領主家の興亡 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    ジル・ド・レ――フランス王国元帥、ジャンヌ・ダルクの戦友にして数々の軍功を重ねた百年戦争の英雄、フランス王よりも富裕とまでいわれたフランス屈指の大貴族・・・しかして、その栄光の陰で快楽の赴くままに百数十名にも上る子供たちの大量殺戮を行ったとして異端審問裁判により処刑された男。恐怖の民話「青髭」のモデルとも云われる、眩し過ぎる光と深すぎる闇を併せ持った彼の生涯をたどってみよう。 ジル・ド・レについて語られるとき、快楽殺人者、悪魔崇拝、瀆神といった描かれ方が多いが、記事では少し趣向を変えて百年戦争(1337-1453)の中に彼を位置付けて、中世末期フランスのとある中小領主家の盛衰という視点で見てみようと思う。 レ男爵家はブルターニュ公に臣従してロワール川河口付近一帯に領土を持った有力領主であったが、十四世紀末、賢女(ラ・サージュ)との異名を持つ女当主ジャンヌ・ド・レ” Jeanne de R

    ジル・ド・レの生涯――百年戦争後期のある中小領主家の興亡 | Call of History ー歴史の呼び声ー
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    hanemimi 2019/10/10
  • イラク北部でダムの水が引き約3400年前のミタンニ帝国の宮殿遺跡が発見

    2019年6月27日発表のテュービンゲン大学プレスリリースによると、2018年秋、イラク北東部クルディスタン地域にある、ティグリス川東岸のモスル・ダム(1980年建設)の貯水池の水が引いたところ、青銅器時代の宮殿が発見された。考古学的に非常に重要な発見として海外でもCNN、BBC他各ニュースで報じられている。 動画:テュービンゲン大学/ Eサイエンスセンター制作 クルド人実業家の資金援助を受けてドイツ・テュービンゲン大学とクルディスタン考古学機構(Kurdistan Archaeology Organization (KAO))の合同チームが調査を行い、同宮殿(ケムネ宮殿”Kemune Palace”)が紀元前15世紀から14世紀にかけてメソポタミア北部とシリアの大部分を支配していたミタンニ(ミッタニ)帝国の時代にさかのぼることができることが判明した。 クルド人考古学者ハサン・アフメド・カ

    イラク北部でダムの水が引き約3400年前のミタンニ帝国の宮殿遺跡が発見
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    hanemimi 2019/07/01
  • ワラキア公ヴラド3世が使用したカルバリン砲の砲弾がブルガリアで発見

    2019年5月30日、十五世紀のワラキア公ヴラド3世(在位1448年、1456~1462年、1476~1477年)が対オスマン戦争で使用したと思われるカルバリン砲の砲弾がブルガリア北東部、ドナウ川沿いの町スヴィシュトフ(Svishtov)の発掘現場で発見されたと“Archaeology in Bulgaria”が報じている。 Culverin Cannonballs from Vlad Dracula’s 1461 Victory over Ottoman Turks Found in Danube Fortress Zishtova in Bulgaria’s Svishtov - Archaeology in Bulgaria. and Beyond Cannonballs from culverins – primitive early medieval cannons – most

    ワラキア公ヴラド3世が使用したカルバリン砲の砲弾がブルガリアで発見
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    hanemimi 2019/06/21
  • 「ジャンヌ・ダルクの指輪」真贋論争

    【3月21日 AFP】フランス史上最も有名な殉教者ジャンヌ・ダルク(Joan of Arc)のものとみられる指輪が20日、西部バンデ(Vendee)県にあるピュイ・デュ・フー(Puy du Fou)の歴史テーマパークで公開された。 ジャンヌ・ダルクの三つの指輪記録に残る限りでジャンヌ・ダルクにまつわる指輪は三種類ある。 第一の指輪は1429年6月、ジャンヌ・ダルクからジャンヌ・ド・ラヴァルという女性へ送られた金の指輪である。ジャンヌ・ド・ラヴァルはシャルル5世に仕えてフランスの勝利に貢献した名将ベルトラン・デュ・ゲクランの後だった老女で、ジャンヌ・ダルクの戦友としてともに戦っていたギー・ド・ラヴァルとアンドレ・ド・ラヴァルの祖母にあたる。 第二の指輪は兄から送られたという指輪で、ジャンヌ・ダルク処刑裁判の証言によれば裁判中、この指輪は裁判長ピエール・コーションによって保管されている。ジャ

    「ジャンヌ・ダルクの指輪」真贋論争
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    hanemimi 2019/06/08
  • アングロ・サクソン七王国(ヘプターキー)の興亡

    七王国時代の開幕ブリトン人に代わってブリタニアの支配的勢力となったアングロ=サクソン諸族は六世紀から八世紀にかけて次々と王国を建国して互いに勢力争いをはじめた。この時代は有力な七つの王国――ケント(” Kent “)、エセックス(” Essex “)、サセックス(” Sussex “)、ウェセックス(” Wessex “)、イースト・アングリア(” East Anglia “)、マーシア(” Mercia “)、ノーサンブリア(” Northumblia “)――が次々栄え、覇を競ったことから七王国(” Heptarchy “、ヘプターキー)時代(注1)と呼ばれる。ただし七つの王国だけでなく中小様々な王国も存立しておよそ二十の勢力が割拠していた。 ポスト・ローマ期とは以下のように定義される。 『「ポスト・ローマ」とは、皇帝権がのちにヨーロッパとなる地域から消滅した5世紀末から、8世紀末年の

    アングロ・サクソン七王国(ヘプターキー)の興亡
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    hanemimi 2019/05/28
  • 中世ヨーロッパの「十分の一税」とは何か

    十分の一税は中世ヨーロッパで教会の維持や聖職者の生計のために各教区の農民から生産物の十分の一を徴収した貢租のこと。 十分の一税の起源十分の一税の起源は聖書の記述にあるイスラエル人の慣習に遡る。 『彼はアブラムを祝福して言った。 「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。』(新共同訳[創世記14.19-20]) 『わたしが記念碑として立てたこの石を神の家とし、すべて、あなたがわたしに与えられるものの十分の一をささげます。』(新共同訳[創世記28. 22]) 『土地から取れる収穫量の十分の一は、穀物であれ、果実であれ、主のものである。それは聖なるもので主に属す。もし、十分の一を買い戻したいときは、それに五分の一を加えて支払わなければならない。牛や羊の群れの十分の一につ

    中世ヨーロッパの「十分の一税」とは何か
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    hanemimi 2019/05/18
  • セミラミス伝説の誕生と変容の歴史~メソポタミアから中世ヨーロッパへ

    セミラミス(” Semiramis ”)は伝説上のアッシリアの女王。ヘロドトスが「歴史」でバビロンの堤防を築いた女王としてその名を挙げて以降、古代ギリシアで様々な著者によってエピソードが創作され、伝説上の人物となった。 アッシリアの王妃サムラマトとその時代モデルと考えられているのは紀元前800年ごろ、アッシリアに実在した王妃サムラマト(” Shammuramat ” or ” Sammuramat ”、シャムラマット、サンムラマートなどとも表記される)。サムラマトはアッシリア王シャムシ・アダド5世(在位:前823~811)の王妃で、同王の死後、子のアダド・ニラリ3世(在位:前810~783)の摂政となった。(注1) アッシリア帝国の主要都市カルフ(現在のニムルド)のナブー神を祀った神殿エズィダにあるカルフの代官ベール・タルツィ・イルマが奉納した神像に『神ナブーに(中略)、アッシリア王アダド

    セミラミス伝説の誕生と変容の歴史~メソポタミアから中世ヨーロッパへ
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    hanemimi 2019/04/13
  • 古代ギリシア×百合の爽やかな傑作『うたえ!エーリンナ』(佐藤二葉作) | Call of History ー歴史の呼び声ー

    サッポー(ギリシア語 “ Σαπφώ “, 英語 “ Sappho ”)は紀元前七世紀~六世紀にかけてエーゲ海のレスボス島で活躍した、古代ギリシアを代表する女性詩人です。教科書や古代ギリシア関連の書籍では英語発音に基づくサッフォーの名で紹介されることが多いです。生前から詩人として高名で、レスボス島で若い女性たちを集めて作詞や舞踏を教えたとも言われています。 作『うたえ!エーリンナ』はそのサッポーの「学園」に入門を許された詩人を夢見る少女エーリンナを主人公にした、少女たちの愛と友情と音楽の日々を描くとても良質な歴史漫画となっています。 大胆な告白は主人公の特権!天真爛漫で前向き、自分の気持ちは臆面もなくはっきり主張するエーリンナに翻弄される、良き結婚を夢見る一見ツンツンした少女バウキスの関係が実に尊い・・・まずはエーリンナの率直さの前にバウキスがみるみる落ちていって、中盤以降にもなるとエー

    古代ギリシア×百合の爽やかな傑作『うたえ!エーリンナ』(佐藤二葉作) | Call of History ー歴史の呼び声ー
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    hanemimi 2019/03/24
  • 中世末旅行が始まるぞ!「エーゲ海を渡る花たち 1巻」感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    あらすじ舞台は十五世紀半ば、イタリア北部の都市国家エステ辺境伯フェラーラ候領。オスマン帝国によるコンスタンティノープル陥落直後で、主人公の一人オリハがその影響を受けたことが作中で明かされるので1453年以後ほどないころと思われます。当時のイタリアとフェラーラに関する歴史的背景については前回の記事でまとめたので、詳しくは以下の記事を参照いただければと思いますが、一巻のあとがきでも日之下先生が描かれている通り、丁度イタリアが”奇跡的に”平和な時代が舞台です。 商家ロセッティ家の令嬢ながら旅することを夢見る通称「跳ねる嬢(インペンナータ)」と呼ばれるおてんばなリーザと、クルム(クリミア)からイタリアへと紆余曲折を経てたどり着いた物静かで思慮深そうなスラヴ系少女オリハが出会い、オリハの妹を探してクレタ島へ向かって一緒に旅立つ中世ヨーロッパ地中海旅行記です。 1巻では、出発に難色を示すリーザの姉マリ

    中世末旅行が始まるぞ!「エーゲ海を渡る花たち 1巻」感想 | Call of History ー歴史の呼び声ー
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    hanemimi 2019/02/19
  • 良作の予感「エーゲ海を渡る花たち」少女二人の中世ヨーロッパ旅行漫画開幕!

    エーゲ海を渡る花たち | 妹を探すため、ふるさとのクルムへと戻りたいオリハと、その旅に同行したいリーザ……ふたりの旅が今始まる! 15世紀半ばのイタリア・フェラーラにて、世界を旅することを夢見る少女・リーザは、クルム(現クリミア)から来た少女・オリハと出会う。妹を探すため、ふるさとのクルムへと戻りたいオリハと、その旅に同行したいリーザ……ふたりの旅が今始まる! 公式ページ・ストーリーより 8月22日に第一話が公開されたばかりの新作ですが、とても面白かったです。主人公の一人リーザ・ロセッティが旅することを夢見る通称「跳ねる嬢(インペンナータ)」と呼ばれるおてんばな商家の娘、もう一人のクルム(クリミア)からイタリアへと紆余曲折を経てたどり着いた物静かで思慮深そうなスラブ系少女オリハが出会い、心打ち解けて旅立とうという第一話でした。舞台となる中世後期のイタリア都市フェラーラの観光案内やメシ、そし

    良作の予感「エーゲ海を渡る花たち」少女二人の中世ヨーロッパ旅行漫画開幕!
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    hanemimi 2018/09/06
  • 「オカルトの帝国―1970年代の日本を読む」一柳 廣孝 編著 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    映画、TV、小説、アニメ、マンガ、ゲームなどのサブカルチャーから宗教・思想さらには日常生活の隅々までオカルトは薄く広く拡散している。日におけるオカルトの広がりのルーツを辿ると1970年代に行き着く。では、現代日という「オカルトの帝国」の原風景といえる1970年代のオカルトの大流行はどのようなものであったのだろうか。「閉ざされた知であるオカルトが白日の下にさらされた1970年代」を描く論文集である。 ただし、絶版。ひと通りネット書店を見て回っても購入することは出来ないようなので、興味がある方は図書館か古書店で。 目次 第一部 オカルトの日 第一章 オカルト・ジャパン・シンドローム――裏から見た高度成長 第二章 小松左京『日沈没』の意味 第三章 ディスカバージャパンと横溝正史ブーム 第二部 メディアのなかのオカルト 第四章 エクソシスト・ショック――三十年目の真実 第五章 「ノストラダ

    「オカルトの帝国―1970年代の日本を読む」一柳 廣孝 編著 | Call of History ー歴史の呼び声ー
  • 映画「ジーザス・キャンプ」とアメリカ宗教右派運動略史

    昨年(2010年)末、未公開映画祭ページにてオンデマンドで観て以来、最近DVDがリリースされていたので再観賞。せっかくなので米国宗教保守派史のまとめも兼ねて感想を。長々と歴史を書いていくが、この福音派の誕生から現代までの歴史を順におさえていくと、最終的にこの作品の全体像が浮かび上がってくると思うので、まぁ、豆知識としてどうぞ。 第一章 原理主義の登場一九世紀末、ドイツの神学校を中心として「高等批評」と呼ばれる聖書分析の手法が広がっていった。これは聖書を絶対的なものとせず、近代科学的な文献学の手法で客観的に分析しようとするもので、聖書を科学的に分析し理解を深めることで、より信仰を強くしようという試みであった。 高等批評はほどなくして米国にも輸入されてプロテスタント教会や神学校で盛んに研究されるが、客観的な分析を行う高等批評は、聖書は神の言葉ではなく誰かが特定の意図を持って書いた創作物であると

  • 幕府代表とペリー艦隊の飲みニケーション全5回まとめ

    先日の記事「「居酒屋の誕生: 江戸の呑みだおれ文化」飯野 亮一 著」にいくつか、ペリー艦隊来航時の日人代表も泥酔していたことを思い出した、といった趣旨のコメントがついていて、そうそうあの酔っぱらいエピソードも面白いんだよね、ということで幕府代表団とペリー艦隊との飲みニケーションエピソードを「ペリー艦隊日遠征記(上)(下)」から紹介しよう。酒を飲むことでのコミュニケーションが相互理解と親睦、異文化交流に大いに役立ち、日米和親条約締結に大きな影響を及ぼしたのだ。両者の酒宴はあわせて五回あった。 1853年7月12日1853年7月8日、ペリー艦隊は浦賀沖に姿をあらわし、米フィルモア大統領から将軍に宛てた親書の受け取りを求めた。これに対し日側は、かねてから黒船来航の情報を元に準備していた通り浦賀での受け取りを拒否、長崎への移動を求めるが、ペリーはこれを拒否して、現在地浦賀での授受を求めた。そ

    幕府代表とペリー艦隊の飲みニケーション全5回まとめ
  • 「幕末外交と開国」加藤 祐三 著

    黒船来航から日米和親条約に至るプロセスを「(1)無能な幕府が(2)強大なアメリカの軍事的圧力に屈し、(3)極端な不平等条約を結んだ」(P257)と理解する見方が強まったのは明治十年以降だという。明治政府は一連の条約改正を政治課題に掲げて前政権である幕府の無能無策を強く主張するキャンペーンを張り、これが通説として長く信じられるようになった。しかし、史料を丹念に追うと、このような幕府無能説、軍事的圧力説、日米和親条約の不平等条約説はどうにも当てはまらない。では黒船来航はどのような過程をたどったのかをコンパクトかつ丁寧に解説したのが書である。 まず、黒船来航は幕府にとって青天の霹靂、であったとはとても言えない。前々から幕府は周到な準備を行っていた。まず、前提としてアヘン戦争を契機に海軍をもたないことから諸外国より劣勢にあるという認識の下で、外国船に対し強硬に武力で追い払うとしていた文政令(18

    「幕末外交と開国」加藤 祐三 著
  • 「砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)」川北 稔 著

    1996年の発売以来売れ続けている世界史入門定番の一冊。砂糖の広がりを通じて様々な地域がつながりあい、ダイナミックに変化していくさまが平易なことばとわかりやすい解説で描かれており、世界史の面白さがこれ以上ないほどに詰まっているので、まぁ、読んでいる人の方が圧倒的に多いでしょうが、あらためて紹介しておこうという記事。 書とあわせて記事下に列挙した書籍を参考にしつつ、大まかな砂糖を巡る歴史を概観しておこう。 歴史上、砂糖は西漸しつつ世界に広がった。砂糖の原料であるサトウキビはムスリム商人によってイスラーム世界の拡大とともに西へ西へと伝播し、十字軍によって地中海世界へ、スペイン・ポルトガルによって大西洋諸島さらに新大陸南米へ、イギリスによってカリブ海諸島へと広がりを見せる。この拡大の過程で砂糖は「世界商品」として人びとの生活に欠かせないものとなっていく。 サトウキビ栽培と製糖の特徴として、第一

    「砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)」川北 稔 著
  • 「江戸幕府崩壊 孝明天皇と『一会桑』」家近 良樹 著

    ペリー来航から大政奉還・王政復古・鳥羽伏見に至る江戸幕府解体の過程は長く西南雄藩を中心にしての見方が支配的だったが、1980~90年代以降、幕府朝廷・朝敵諸藩に関する研究が進み、勝者側である薩長中心の王政復古史観に批判が加えられ、より大局的に幕末を考える視点へと研究の主軸が移ってきた。 その中で非常に重視されるようになった幕末の勢力に一橋慶喜・会津松平容保・桑名松平定敬による「一会桑」がある。近年では大河ドラマでも当たり前のように使われているし、概ね一般的になってきているのではないだろうか。近年の主流となりつつある「一会桑」を提唱したのが書の著者家近良樹教授で、その「一会桑」とやはり再評価されてきた孝明天皇の朝廷の動きを中心に据えて幕末政治史を捉え直したのが書である。2002年に新書として発売されたものに改訂が加えられて2014年に講談社学術文庫から再発売された。 武力倒幕を目指す西南

    「江戸幕府崩壊 孝明天皇と『一会桑』」家近 良樹 著
  • 「すばらしい新世界」オルダス・ハクスリー 著 | Kousyoublog

    ずっと読みたいと思っていた。1932年に描かれた作はディストピア小説の傑作として、オーウェルの「一九八四年」と並び称されることも多い。その理由は読めばわかる。 西暦2540年、世界は自動車王フォードを神格化し、高度な効率化に基づく高福祉の実現によって安定社会を築き上げていた。人間は工場で生産され、条件付け教育に基づいて欲望は抑えられ、フリーセックスの奨励とソーマと呼ばれる快楽薬はストレスを解消し、遺伝子操作に基づき生まれながらにして定められた階級の中であるべき人生を歩む。共同性(コミュニティ)、同一性(アイデンティティ)、安定性(スタビリティ)をモットーとする「すばらしい新世界」だ。 この作品世界は著者ハクスリーの未来予測に基づいて構築されている。1932年、彼は未来をどのように予測したか、書に収められた1946年の「著者による新版への前書き」で詳しく語られているが、この前書きは実に鋭

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